ため池等の3次元情報取得のための繰り返しドローン画像解析システム

要約

ため池におけるドローンによる繰り返し撮影画像の活用を想定して、3次元の点群やメッシュモデル作成に必要となる一連のプログラムを解析システムとして統合することによって、関係者がため池の3次元形状情報を作成・閲覧・共有できるシステムである。

  • キーワード : 無人航空機(UAV)、堤体、3次元形状情報、繰り返し計測、画像解析
  • 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設整備グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

ため池等の重要な農業水利施設においてドローン画像の有用性が認識され活用されているが、その画像を活用した3次元形状情報の作成までは実施されない場合が多い。またため池等の改修工事に関する情報化施工やBIM/CIMの利用において、ドローン画像を活用した3次元形状情報の作成とその情報の利用が有用であるが、作成のための手続きの高度さ、複雑さ、また整備すべき高額な解析ソフトウェアの必要性などが、その技術の普及の障壁となっている。また3次元形状情報のデータのフォーマットは多様である。その情報を閲覧・共有するためのソフトウェアまたはプログラムも多くの選択肢があり、高額な場合もあり、操作も複雑なため、そのような情報を取り扱うことを専門としない関係者間で情報を共有することが困難な状況となっている。そこで、ため池等の農業水利施設を対象にした、ドローンの繰り返し撮影画像からの3次元形状情報作成のための一連の解析をルーティンとして実行できるシステムを作成するとともに、それを関係者がそれぞれに適した利用環境(例えばデスクトップPCやクラウド上)において活用できるようコンテナ化する。このシステムを施設の関係者で協働的に活用することにより、施設の改修工事における情報化施工にむけた出来形管理や施工プロセスの監視や記録、また維持管理段階においては形状変化の記録や災害時の定量的な被災状況把握などに活用できる。

成果の内容・特徴

  • 解析システムは、ドローン撮影動画の読み込み、点群作成のための画像解析、作成された点群からのメッシュ作成などの処理、繰り返し計測結果および解析結果の自動処理・保存、および閲覧等の機能から構成される(図1)。
  • ため池改修工事の過程等で、ドローン等により繰り返し3次元形状情報を取得することができる。それにより、ため池の改修工事後の法面形状の出来形の面的な管理(図2)や施工プロセスの記録に活用できる。後者について、一連の施工プロセスの記録を統合的に表示することにより、改修後には直接確認ができない内部状態の記録として、保存管理および閲覧といった関係者間での情報管理・共有に活用することができる(図3-(a))。
  • 維持管理の段階において、上記2.と同様に繰り返し本システムを活用することによって、ため池の変状があった場合にその状態変化を定量的に追跡できる(図3-(b))。
  • 災害時には、短時間に被災状況を3次元的かつ定量的に評価することができ、被災状況の情報共有や災害査定等に活用できることが期待される(図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : ため池等の改修・維持管理に関わる民間業者、土地改良区、行政部局
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国のため池等の土構造物を想定
  • その他 : 正確かつ詳細な3次元形状情報を作成するには、それを可能にする画像を取得することと、精度確保等のために各種パラメータ等の設定を行うことが必要となる。
  • PCやサーバに実装可能なコンテナ化されたシステムであり、またクラウド上でも利用できる。

具体的データ

図1 繰り返しドローン画像解析システムのイメージ,図2 ため池模型の改修工事後における法面形状の出来形の面的な管理,図3 ため池改修工事および変状監視をユースケースとして想定した実証試験結果,図4 ため池の被災状況の定量的評価のイメージ

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)、PRISM
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 黒田清一郎、堀俊和、田頭秀和、大山俊一、泉明良、寺家谷勇希、本間雄亮、牧野信夫、杉本里佳
  • 発表論文等 :
    • 本間ら(2024)農業農村工学会誌、92(2)23-26
    • 黒田ら(2022)地盤工学会誌、70(8)775:9-16
    • 黒田ら(2021)地盤工学会誌、69(8)763:23-30