建設材料の耐摩耗性を相対評価できるサンドブラスト装置

要約

コンプレッサーで圧縮した空気をブラストガンに送り込むことによって研磨材を高圧で噴射し、供試体を研磨することで対象材料の耐摩耗性を相対評価する装置である。「圧力」や「ノズルから試験面までの距離」を調整することによって、試験力を任意に制御可能である。

  • キーワード : サンドブラスト、耐摩耗性、促進摩耗、建設材料、農業用水路
  • 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

農業用水路は、流水や土砂等により摩耗劣化を受けるため、その構成材料には耐摩耗性が要求される。耐摩耗性の評価方法として、様々な種類の促進摩耗試験が提案されているが、その多くは、試験装置が特殊または高価であること、試験に長時間を要すること、原位置試験への適用は困難であること等の課題を有している。これらの課題を解消するために、農研機構では、小型のサンドブラスト装置を用いた促進摩耗試験を検討している。しかし、市販のサンドブラスト装置はメーカーによって仕様が異なるため、試験の規準化のためには仕様が統一された装置の開発が求められる。
本研究では、当該試験で用いる装置の規格統一を目的に、規格品のみを組み合わせることで安価に作製できるサンドブラスト装置を新規開発するとともに、無機系材料を対象にその性能を評価する。

成果の内容・特徴

  • サンドブラスト装置は、ブラストガン(吐出口径5mm)、コンプレッサー、バッファータンクによって構成される。ブラストガンは規格品の継手などを組み合わせて製作することができる。装置一式の導入コストは10万円以下と安価である(図1a)。
  • コンプレッサーおよびバッファータンクとブラストガンを耐圧ホースで接続し、ブラストガンに圧縮空気を送り込むことによって、ブラストガン上部のタンクに収容された研磨材が吸引され、ノズルから噴射される。ブラストガンには樹脂製チューブが内装されており、これによって圧縮空気の経路が制限され、タンク内の研磨材が逆流することなく吐出される(図1b)。
  • ブラストガンのノズルと直交するように試験面を配置して研磨材を噴射し、研磨材を供試体に衝突させることで供試体がすり鉢状に摩耗する。建設材料の耐摩耗性評価では、摩耗深さをひとつの指標とすることができる(図2)。
  • 水セメント比(W/C)50%、砂セメント比(S/C)3の標準モルタルを対象に、圧力を0.10、0.15、0.20MPaの3段階、ノズルから試験面までの距離を25mm、50mmの2段階に設定し、本装置の性能を確認した結果を図3に示す。実験の範囲では、圧力が大きくなるほど、また距離が近くなるほど、摩耗深さは大きくなる。
  • コンクリート開水路における補修材料の品質規格試験として利用されている水砂噴流摩耗試験では、標準モルタルを10時間試験に供した場合の摩耗深さが3.62mm(n=92)と報告されている。本装置では、例えば圧力を0.20MPa、ノズルから試験面までの距離を50mmとした場合、標準モルタルを3.62mm摩耗させるのに要する試験時間は約1分であり、水砂噴流摩耗試験よりも迅速に供試体を摩耗させることができる(図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 建設材料の品質評価を行う試験機関、機能診断を行う建設コンサルタント会社。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : コンクリート水路など、耐摩耗性が要求される建設材料の品質照査に活用できる。また、農業土木分野以外にも、摩耗が問題となる道路(舗装)、建築材料など他分野への展開も期待できる。
  • その他 : 本装置は、構成部品も少なく軽量であるため、施工時の完了検査や供用中のモニタリング等、原位置での耐摩耗性評価への応用も可能である。

具体的データ

図1 サンドブラスト装置の構成および仕組み,図2 サンドブラスト装置を用いた促進摩耗試験の手順,図3 試験時間と摩耗深さの関係,図4 本手法と水砂噴流摩耗試験の比較

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2019~2023年度
  • 研究担当者 : 金森拓也、川邉翔平、森充広、上野和広(島根大)
  • 発表論文等 :
    • 金森ら(2020)農業農村工学会論文集、311:IV_13-IV_14
    • 金森ら(2021)農業農村工学会論文集、313:I_271-I_278
    • Ueno K. et al. (2023) Case Studies in Construction Materials. 18:e01812
    • 金森ら「ブラストガン、ブラスト装置、促進摩耗試験装置及び促進摩耗試験方法」特開2022-109757(2022年7月28日)