粘土質転換畑の砕土率が播種期間中のダイズ種子近傍の土壌水分損失に及ぼす影響

要約

砕土率の低い粘土質転換畑の播種床では、土壌が乾燥しやすく、ダイズ種子の出芽・苗立ちに悪影響を及ぼす。播種期に晴天が続くことが予想される場合や、水田から転換初年目で砕土率が低くなることが予想される転換畑では、種子を深めに播種することで出芽・苗立ち率を向上させ得る。

  • キーワード : 粘土質転換畑、砕土率、ダイズ、乾燥害、出芽・苗立ち率
  • 担当 : 農村工学研究部門・農地基盤情報研究領域・農地整備グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

粘土質な転換畑では、耕うんによりセンチメートルスケールの土塊が形成される(図1)。このような土塊を多く含む播種床(地表面から10cm前後の深さまでの土層)では、下方からの液体の水の供給が限られる一方で、風により粗大な土塊間の間隙を通して蒸発が促進されるため、土壌水分が失われやすいといわれている。そのため、播種期に晴天が続く場合には、ダイズ種子の近傍が著しく乾燥し、出芽・苗立ちに悪影響を及ぼすことが懸念される。ダイズ種子への乾燥害を抑制するためには、実際の圃場で、砕土率が播種床の鉛直土壌水分分布に及ぼす影響について明らかにし、乾燥の及ぶ深さより下方に播種することが有効である。そこで、本研究では、砕土率がダイズ播種期の播種床の鉛直土壌水分分布および水分動態に及ぼす影響を、3年間の現地調査により明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 平均土塊径の大きい(砕土率の低い)播種床では、播種期間中(7-8日間)に播種深度(深さ5cm)の土壌水分量が永久シオレ点に到達するほどの著しい減少を示し(図2)、このときの出芽・苗立ち率は65%である。また、播種深度における播種期間中の土壌水分損失量は、平均土塊径と有意な正の相関を示す(図3)。したがって、播種期に晴天が続くことが予想される場合や、水田から転換初年目で砕土率が低くなることが予想される転換畑では、種子を深めに播種することでダイズの出芽・苗立ち率を向上させ得る。
  • これまで正確に測定することが困難であった、土塊を含む土層の水分量は、考案する広範囲の土層採取とレーザー距離計を用いた多点の深さ計測により、精度よく評価することができる。具体的には、土層の上に17.4cm×27.8cmの透明なアクリル板を設置し、アクリル板からレーザー距離計により複数点の深さを測定してその平均値から土層の深さを取得した上で、アクリル板の直下の土塊を含む土層を採取して含水比を測定する(図4)。この方法により、センチメートルスケールの土塊を含む土層ではコアサンプラーや土壌水分センサーが土塊の大きさに比して小さく土層の代表的な水分量を測定することが難しい点や、土層の凹凸が激しく土層の深さを一意に定めることが容易でない点を克服できる。
  • 砕土率の低い播種床で著しい乾燥が生じるのは、下方からの液体の水の供給が少ないことに加えて、砕土率の高い圃場と比べて水蒸気が移動しやすくなるためである。マイクロライシメータを用いた蒸発量の測定結果を使って水収支を計算すると、播種深度における上向き水フラックス(下方からの水供給量)は、土塊の大きさによらず、1mmd-1以下しかない。一方で、見かけの水蒸気拡散係数と分子拡散係数の比(水蒸気の移動しやすさ)は、平均土塊径が1.8cmの圃場で2.0であるのに対し、平均土塊径が2.5cmの圃場では5.1であり水蒸気が移動しやすい。

成果の活用面・留意点

  • 深く播種することで種子への乾燥害を抑制し得るが、播種深度が深すぎると、排水不良によりかえって種子が湿害を受けてしまう可能性がある点は注意が必要である。
  • 砕土に適した土壌水分量は、塑性限界より少し乾いた程度とされている。そのため、転換初年目の転換畑でなくても、梅雨時で土壌が湿った状態で耕うんを行うと砕土率が低下しやすい。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2016~2019年度
  • 研究担当者 : 松本宜大、吉田修一郎(東京大)、大野智史、関矢博幸、西田和弘(東京大)
  • 発表論文等 : Matsumoto Y. et al. (2025) Soil Sci. Plant Nutr. 71:1-11
    doi:10.1080/00380768.2024.2408319