落差工における落下水騒音の予測方法

要約

3次元流れの数値解析によって得られる乱流エネルギー散逸率を用いて、落差工における落下水騒音としてA特性とG特性の音響パワーレベルを予測する手法である。落下エネルギーを用いる従来の予測手法よりも高い精度で予測でき、土地改良事業における環境影響評価に有効である。

  • キーワード : A特性、G特性、音響パワーレベル、3次元流れの数値解析、乱流エネルギー散逸率
  • 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

老朽化した農業水利施設の改修や統廃合に伴い、水路の通水量が増加する際、水路の嵩上げは可能であっても、周辺の土地利用状況から落差工の規模の拡大は難しい場合がある。この結果、現在は周辺に居住する人々から落差工で発生する落下水音に対して苦情が出ていなくても、改修や統廃合の後には騒音として問題になることが懸念される。水路と落差工が新設される場合も、騒音の問題が発生する可能性がある。しかし落差工における落下水騒音を十分な精度で予測できる方法は確立されておらず、その開発が求められている。
本研究では、落下水のエネルギーの一部が熱や音に変換されること等によって落下水音が発生すると考えられることに着目し、3次元流れの数値解析によって得られる乱流エネルギー散逸率との関係から、A特性およびG特性の音響パワーレベルを予測する方法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 本方法の手順(図1)としては、まず、落差工および上下流の水路の図面や流量のデータ等をもとに、落差工の3次元流れの数値解析を行い、中央縦断面における乱流エネルギー散逸率の最大値(図2)を確認する。次に、乱流エネルギー散逸率とA特性およびG特性の音響パワーレベルとの関係式(図3)に対し、先に求めた乱流エネルギー散逸率の最大値を当てはめ、発生すると考えられる騒音を予測する。
  • 図2の3次元流れの数値解析の結果は、ある地区の代かき期の落差工(1)を対象としたものである。流れの基礎方程式にはレイノルズ平均されたNavier-Stokes方程式と連続式を用い、水面の変動の解析手法にはVOF法、乱流エネルギー散逸率の解析手法には標準型k-εモデルを用いている。これらの基礎方程式と解析手法を用いることで、時間平均流れの近似値が解析結果として得られる。
  • 図3の関係式は、2.の落差工(1)および落差工(2)~(3)を対象に作成したものである。落差工(1)~(3)は、分合流がなく流量が同一の路線において、水流を鉛直落下させて水クッション部に突入する際に生じる衝撃や水クッション部における乱れ等の作用によって減勢が行われる水クッション型として築造されている。ただし、水路の横断面形状、落差工の上下流の段落差、水クッションの長さと深さ等がそれぞれ異なる(図4)。本関係式では、乱流エネルギー散逸率とA特性、G特性の音響パワーレベルの決定係数R2はそれぞれ0.94、0.83であり、この式を用いることで落差工における落下水騒音を高い精度で予測できる。
  • 落差工(1)~(3)を対象に、従来の予測で用いられている落下エネルギー(=水の密度×重力加速度×流量×段落差×落ち口の幅)と音響パワーレベルの直線近似関係を整理すると、代かき期と普通期とで異なる直線関係が得られる。実務的な予測のため一つの直線で近似するとA特性ではR2は0.34、G特性ではR2は0.28となる。本方法では流量毎に関係式を作成する必要はなく、汎用的に適用できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果の活用者は、土地改良事業における農業水利施設の環境影響評価に携わる農林水産省や都道府県の技術系職員や民間の設計会社職員等の農業土木技術者である。
  • 乱流エネルギー散逸率と音響パワーレベルの関係のデータをより多く蓄積することで、汎用性の検証を行う必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間 : 2021~2022年度
  • 研究担当者 : 浪平篤
  • 発表論文等 : 浪平(2025)土木論集、81:24-16081