要約
コンクリート開水路の摩耗状況をデジタル画像から予測するAIモデルである。専用の機器が不要であり、デジタルカメラやスマートフォン等で水路の表面を撮影するだけで、コンクリート開水路の躯体表面の粗さを評価できるため、手軽に点検を行うことができる。
- キーワード : 農業用水路、点検、摩耗、粗度、AI
- 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
摩耗はコンクリート開水路の主な劣化現象の一つである。この摩耗が進行すると、躯体表面の粗さが増大し、水路の基本機能である通水性が低下するという問題が生じる。そのため、コンクリート開水路の性能を適切に維持するためには、摩耗状況を定期的に点検することが重要となる。
農研機構では、これまで摩耗状況を定量的に評価する手法として、デプスゲージを用いる手法、型取りゲージを用いる手法、レーザー距離計を用いる手法を提案しているが、これらの手法はいずれも測定に専用の機器を必要とする。そこで、本研究ではデジタルカメラやスマートフォン等で撮影した画像から摩耗の程度を定量的に予測するAIモデルを開発する。
成果の内容・特徴
- デジタルカメラやスマートフォン等を用いてコンクリート開水路の表面を撮影し、その画像をAIモデルによって解析することで、撮影した躯体表面の粗さ(算術平均粗さ:Ra)を数値で予測する(図1、図2)。現場作業においては、専用の機器や技術を必要とせず、デジタルカメラやスマートフォン等で画像を撮影するだけで済む。また解析から結果の出力までも自動で行われるため、簡易かつ短時間で予測結果を得ることができる。
- コンクリート開水路は摩耗の進行により、その表面の様子が、細骨材の露出、粗骨材の露出、粗骨材の剥落と変化していき、またそれに伴って表面の粗さも大きくなっていく。本モデルでは、この外見の変化と粗さの関連性をAIに学習させている。学習データには、4地区の現地コンクリート開水路にて収集した計170組の躯体表面の画像および型取りゲージを用いて計測した撮影範囲のRaを使用している。なお、データ収集時の水路はいずれも粗骨材が露出している状態であり、収集されたデータはRaが0.2~1.0mmのものが多い(図3)。
- 型取りゲージによって計測したRaを実測値とし、AIモデルにより予測されたRaと比較すると、その差(予測誤差)は80.0%のデータで±0.15mm未満となる(図4)。なお、収集したデータにおけるRaの範囲は0.19~1.68mmである。また、Raを既往研究で提案されている換算式により粗度係数に換算すると、データ収集範囲0.0122~0.0162に対して、82.9%のデータで誤差±0.0005未満となる。
成果の活用面・留意点
- AIモデルによる解析を適切に実施するため、コンクリート開水路の表面が藻類等により汚れている場合は、撮影前にブラシ等で掃除を行い、水路表面以外の背景が入らないように撮影する必要がある。また、撮影範囲は縦200~300mm、横250~400mmとし、縦横比は4:3とする(図2)。
- 学習データの収集対象としたコンクリート開水路はいずれも粗骨材が露出していたため、本モデルの活用対象は、粗骨材が露出する程度まで摩耗が進行したコンクリート開水路を想定している。さらなるデータ収集等による活用対象範囲の拡大と汎化性能の向上を図っていくことが課題として残されている。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 木村優世、川邉翔平、金森拓也、森充広、伊佐彩華、大山幸輝
- 発表論文等 : 木村ら(2025)農業農村工学会誌、93:7-10