ベイズ推定の代替手法を導入した不確実性を可視化できるAI水位予測モデル

要約

リアルタイム予測に利点のある長・短期記憶(LSTM)ネットワークモデルを活用したAI水位予測モデルに、ベイズ推定の代替手法を導入したモデルである。予測精度の改善と予測結果の不確実性の表現が可能となる。

  • キーワード : 長・短期記憶、LSTM、MCドロップアウト、水位予測、機械学習
  • 担当 : 農村工学研究部門・水利工学研究領域・水利制御グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

AIを利用した水位予測は、過去のデータを使って事前学習を行うため、観測データが十分に得られない大規模な洪水では予測精度が低いという課題がある。このため、予測精度の改善とともに、未経験の豪雨による水位上昇の発生を捉えることができるモデルが求められている。そこで、リアルタイム予測に広く利用されている長・短期記憶(LSTM)ネットワークモデルに、ベイズ推定の代替手法を導入することで、不確実性を考慮した予測が可能なAI水位予測モデルを開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発したモデルは、予測時間の迅速性などの観点からリアルタイム予測に広く利用されている長・短期記憶(LSTM)ネットワークモデルに、ベイズ推定の代替手法を導入する。これにより、予測精度が改善されるうえ、予測結果の不確実性の表現が可能となる(図1)。導入するベイズ推定の代替手法は、ネットワーク内の予測に活用しないノードをランダムに切り替える手法であるMonte Carloドロップアウト(MCドロップアウト)である。
  • 図2、3は、開発したモデルによって低平地に位置する排水機場の水位を予測し、従来型モデルとの比較により予測精度を検証した結果である。事前学習に用いる水位のデータは、1時間間隔で観測された9年間分のデータである。検証を行う降雨イベントは、9年間で最大の洪水時の水位とする。
  • 機械学習アルゴリズムの挙動を設定するハイパーパラメータであり、ネットワーク内の出力層に近いノードを不活性化する割合であるドロップアウト率の感度解析を行い、ドロップアウト率が0.3の場合に良好な予測精度が得られる。予測のリードタイムが1時間と3時間の場合、従来型モデルと比較して、Nash-Sutcliffe係数(NSE)による検証において約10%予測精度が改善する。予測精度が改善する要因は、少しずつ異なる複数の予測モデルの全ての結果を平均しているため、バイアスや分散を小さくできる、過学習の発生を減じることができる等が考えられる。
  • 予測結果の不確実性は、標準偏差の3倍と仮定した確信区間によって表現することができる(図3右の灰色領域)。また、開発したモデルでは、MCドロップアウトの導入によって水位の最大値の周辺においてスムーズな時間変化が得られている。

成果の活用面・留意点

  • 開発したモデルを適用する場合には、大規模な洪水を含むデータを準備することが望ましく、少なくとも5年間分の水位データは必要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2021~2024年度
  • 研究担当者 : 木村延明
  • 発表論文等 : 木村ら(2024)土木学会論文集、80:23-22011