要約
メタン発酵消化液の肥料成分組成は原料の影響を受ける。乳牛ふん尿由来の消化液は相対的にカリや有機物の含有量が多いなど原料による違いがある一方、消化液中の窒素の組成や窒素肥効に大きな差はなく、消化液は共通して、アンモニア態窒素基準で施肥設計することが可能である。
- キーワード : 再生可能エネルギー、メタン発酵、消化液(バイオ液肥)、窒素肥効
- 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
農村地域でメタン発酵を事業として成立させるためには、原料とほぼ同量生成される消化液(バイオ液肥)を肥料として有効利用できることが必要条件である。近年、メタン発酵施設の導入件数が増加し、それに伴い、食品廃棄物や汚泥など、多様な原料の消化液の肥料としての利用が進んでいる。一方で、原料の種類の違いは消化液の肥料成分濃度や肥効に影響するが、これまで多様な消化液が同様に扱われ、原料別の整理がされておらず、液肥利用計画の検討時に十分な情報がないことが課題であった。その対応として、全国のメタン発酵施設から多様な原料(乳牛ふん尿、食品廃棄物、汚泥)の消化液を採取して肥料成分等の整理・比較を行い、メタン発酵原料の違いが消化液の肥料成分組成に与える影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- メタン発酵の原料として、乳牛ふん尿、食品廃棄物、汚泥、それらを混合したものがある。乳牛ふん尿を原料とした消化液については、近年、北海道を中心に消化液を固液分離(メッシュ径1mm程度)して、固形分(麦稈が主体)を家畜飼養の敷料として利用し、液分を液肥利用する事例が多くなっている(図1)。
- 消化液の全窒素濃度(T-N)、アンモニア態窒素濃度(NH4-N)はそれぞれ0.23~0.48%、0.14~0.26%の範囲である。全窒素の50~62%が速効性の肥料成分であるアンモニア態窒素で、残りが有機態窒素である。消化液により濃度に多少違いがあるが、原料の種類による窒素濃度の違いには明確な傾向は見られない(表1)。
- 土壌施用後の消化液由来の窒素無機化率(消化液由来全窒素に占める無機態窒素の割合)は、ほぼ一定で推移する(図2)。つまり、消化液由来有機態窒素の土壌施用後の無機化量は限定的であり、原料の違いによって消化液中の窒素の組成や窒素肥効に大きな差はなく、消化液は共通して、アンモニア態窒素基準で施肥設計することが可能である。
- 消化液中の窒素、リン酸、カリのバランスについては原料による違いがある。乳牛ふん尿を原料とした消化液は窒素(アンモニア態窒素)、リン酸に対して、カリ濃度が高い。食品廃棄物を原料とする消化液については、窒素(アンモニア態窒素)に対して、リン酸、カリ濃度が低め、また、汚泥を原料とする消化液については窒素(アンモニア態窒素)、リン酸に比べてカリ濃度が特に低いという特徴が見られる。
- 消化液中の有機物の含有量についても原料による差が見られる。乳牛ふん尿を原料とする消化液、特に、固液分離を行っていない消化液は、敷料(麦稈等)が混入しているためVS(有機物の指標)濃度が高く、有機物施用による土壌改良効果が相対的に大きい一方、散布作業において、配管の詰まりの原因となるリスクが高い(図3)。それに対して、食品廃棄物や汚泥を原料とした消化液は相対的に有機物含有量が少なく、有機物施用効果が小さい。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、メタン発酵事業者が消化液の利用計画を検討する場面や普及組織が消化液を利用した栽培の営農指導を行う場面で活用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究推進事業:脱炭素型農業実現のためのパイロット研究プロジェクト)
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 中村真人、折立文子、藤田睦
- 発表論文等 :
- 中村ら(2024)農業農村工学会誌、92:257-262
- 中村ら(2025)農研機構研究報告、20:11-20
- 中村(2023)バイオ液肥の利用「メタン発酵システム-基礎から実務まで知り尽くす-」pp.333-353、環境新聞社、東京
- 中村(2022)バイオ液肥(農地利用する消化液)「令和3年度 経済産業省資源エネルギー庁委託事業「新エネルギー等の導入促進のための広報等事業委託費における再エネ導入・運転人材育成支援事業」メタン発酵バイオガス発電における人材育成テキスト」pp.141-145、経済産業省資源エネルギー庁、東京