農業集落排水汚泥の処理の現状と汚泥肥料の特性

要約

汚泥肥料は製造期間や加温・通気の有無によって開放型・密閉型コンポスト、乾燥汚泥の3種類に分類できる。無機態窒素の割合や窒素無機化パターンは製造方法によって異なるが、作物が利用可能な窒素成分は製造方法に関わらず30~40%程度であり、その分の化学肥料を代替できる。

  • キーワード : 汚泥肥料、農業集落排水、汚泥処理、製造方法、肥効特性
  • 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

農業集落排水の汚水処理過程で発生する汚泥(以下、集排汚泥)の肥料化による農地還元は、その分の化学肥料使用量の削減等に寄与するため、農林水産省では集排汚泥の農地還元利用を推進している。集排汚泥の処理プロセスは農業集落排水施設(以下、集排施設)内で処理する場合だけでなく、し尿処理場等に集約して処理する場合があるなど、複雑であるため、効果的な農地還元利用を行うためには、集排汚泥の処理・利用の現状を整理する必要がある。また、汚泥肥料は有機質肥料であり、含有する肥料成分のすべてが作物にとって利用可能な形態ではないため、汚泥肥料の利用にあたっては各肥料成分の肥効特性を把握することが重要である。そこで、本研究では、集排汚泥処理の現状を整理し、集排汚泥を原料とした製造方法の異なる3種類の汚泥肥料の肥効特性について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 集排汚泥の処理方法には農地還元、建設資材、廃棄処分である未利用がある。2022年度末に行われた農林水産省の農業集落排水事業実施状況等調査の結果(図1)によると、集排施設内に併設された再資源化施設で農地還元・建設資材にする以外に、外部の再資源化施設やごみ焼却場、し尿処理場に輸送されて処理される場合があり、集排汚泥の約92%が外部で処理されている。また、し尿処理場等で処理が完結せず、再度輸送されて処理される場合もある。このように集排汚泥の処理・利用は複雑であり、農地還元率向上のためには、集排事業以外の事業と連携した取り組みが必要である。
  • 汚泥肥料の製造方法は様々であるが、本研究で供試した集排汚泥肥料は3地区から収集し、製造方法等について聞き取り調査を行った結果、特に製造期間と加温・通気の有無により、①開放された空間で長時間発酵させる開放型コンポスト、②密閉された発酵槽で加温・通気して発酵を促進させる密閉型コンポスト、③乾燥炉で熱風を与えて急速に乾燥させる乾燥汚泥に分類できる(表1)。肥料成分は3種類の汚泥肥料とも、窒素、リン酸に対してカリの含有率が低い。開放型コンポストは副資材としてもみ殻が添加されている分、C/N比が高めで、窒素、リン酸濃度が低めである。全窒素含量に占める無機態窒素の割合は、コンポストで20%程度、乾燥汚泥で2%程度であり、コンポストでは発酵過程を経ているため、有機態窒素の無機化が進んでいる(表2)。
  • 全ての汚泥肥料で土壌施用後に窒素の無機化が速やかに進行し、作物に利用可能な形態である無機態窒素が増加する(図2)。乾燥汚泥は土壌施用前の無機態窒素が少ないが、コンポストと比べて急激に無機化が進み、窒素無機化量も多くなる。開放型コンポストは製造時に十分な発酵が行われるため、土壌施用前から窒素無機化率が高い。また、密閉型コンポストは発酵槽内で加温・通気をしていることから、発酵と同時に乾燥も進み、乾燥汚泥と開放型コンポストの中間的な結果になったと考えられる。以上より、即効性の肥料成分の割合を表す最終的な無機化率は製造方法に関わらず30%~40%程度であり、その分の化学肥料使用量の削減が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、汚泥肥料の施肥設計に用いることができる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(スマート農業技術の開発・実証・実装プロジェクト)、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 藤田睦、中村真人、折立文子、井原啓貴
  • 発表論文等 :
    • 藤田ら(2024)農業農村工学会誌、92:263-268
    • 中村ら(2024)季刊JARUS、133:29-32