要約
Sentinel-2衛星データと水域データを用いて、農業用排水路等において繁茂する侵略的外来植物の群落の分布とその経時変化を可視化する手法である。本手法によって作成される時空間ヒートマップは、農業水利施設管理者や土地改良区等が適切な駆除計画を立案するうえで活用できる。
- キーワード : Sentinel-2衛星データ、侵略的外来種、リモートセンシング、水涯線データ、NDVI
- 担当 : 農村工学研究部門・農地基盤情報研究領域・空間情報グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
農業用排水路等において旺盛に繁茂する植物(侵略的外来植物等)は、水面を覆うことで生態系の攪乱や通水阻害などの被害を引き起こす。効率的な駆除を進めるためには、侵入経路や定着しやすい環境条件を明らかにし、重点的な監視や防除を行うことが重要である。そのためには、過去の分布状況やその経時変化を把握する必要がある。そこで、本研究では無料で利用可能なSentinel-2衛星データのアーカイブ画像と水域データを用いて、植物群落の時空間変化を把握する手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 本手法は、農業用排水路等の比較的幅の狭い水路における侵略的外来植物の分布状況を把握することを目的とする。対象領域は、事前に現地調査や既存資料に基づき、対象植物群落の存在が確認された区間とする。なお、本研究では、侵略的外来種であるナガエツルノゲイトウ(Alternanthera philoxeroides)を対象として、手法の有効性を検討した結果について提示する。
- 本手法では、まずSentinel-2衛星データのBand4(赤)およびBand8(近赤外)を用いてGISソフトウェア(例えばQGIS等を利用)上で正規化植生指数(NDVI : Normalized Difference Vegetation Index、植生の活性度を示す)を算出し、NDVI画像を作成する。次に、国土数値情報の水涯線データをダウンロードして、GISソフトウェア上で10m間隔(NDVI画像の空間解像度と対応)のポリゴンに分割し、ポリゴン単位でNDVIの平均値を求める(以降、区画平均NDVI値と称する)。さらに、概ね月に1回の頻度で取得した複数時期のSentinel-2衛星データをダウンロードし、幾何補正を行った後、上記の手順によって区画平均NDVI値を算出し、グラフ作成ソフトウェア(例えばSurfer(Hulinks社)等を利用)でKriging法による内挿補間を実施し、空間的な連続性を持つNDVI分布画像を生成する。
- さらに、横軸を上流からの距離、縦軸を時間とし、NDVI値を色の濃淡で表現した時空間ヒートマップを作成し、駆除実績等の属性データと比較検討することで、群落の動態を可視化・分析する。ヒートマップからは、駆除による群落の消失、その後の再繁茂、繁茂域の下流への遷移など、過去から現在に至るマクロ的な群落動態を視覚的に把握できる(図1)。なお、ここでは縦軸を年単位で表示しているが、実際には日単位のスケールを保持しており、視認性のため年単位の目盛りを示している。
- 信頼性評価のため、本種の群落が確認されている水域を対象として、Sentinel-2と高解像度衛星WorldView-3の衛星データ(高額かつ撮影頻度が限定的)から算出した区画平均NDVI値を比較した結果、両者の相関係数はr=0.96で有意な相関が確認され(図2)、分布パターンも概ね一致した(図3)。本手法により、水域におけるナガエツルノゲイトウの分布と時間変化を広域かつ長期的に把握でき、駆除効果の持続性や再繁茂の傾向を定量的に評価することが可能となる。これにより、護岸構造との関連を考慮した管理計画の立案や、農業水利施設管理者や土地改良区等による駆除業務の優先箇所・時期の判断に資することが期待される。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 農業水利施設管理者、土地改良区、解析業務を実施するコンサルタント。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 本種の群落が確認されている水域。
- その他 : 本手法は、水路幅が比較的狭く(10~30m程度)、単一種の侵略的外来植物が繁茂する水域を対象としており、広幅水路や多種混在の地域に適用する場合には、追加の分類処理や高解像度データの利用を検討する必要がある。なお、Sentinel-2衛星データは欧州宇宙機関(ESA)が提供するCopernicus Open Access Hub(https://scihub.copernicus.eu/)から無料で入手可能である。また、国土数値情報の水涯線データは国土交通省の国土数値情報ダウンロードサービス(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)から取得して利用することができる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : BRIDGE
- 研究期間 : 2024~2025年度
- 研究担当者 : 篠原健吾、栗田英治
- 発表論文等 : 篠原、栗田、特願(2025年8月20日)