要約
ため池底樋内部のひび割れや漏水の有無を可視画像で点検するとともに、レベル測量の原理で底樋縦断勾配の変化を検知する調査装置である。調査可能な底樋の直径は250mm以上であり、360°カメラやLiDARセンサーなどを搭載することにより、底樋内の状況を詳細に点検できる。
- キーワード : ため池、底樋、ひび割れ、漏水、縦断勾配
- 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
農林水産省で制定されている「防災重点農業用ため池の劣化状況評価等の手引き」では、ため池の底樋等の取水設備について、目視などに基づいた施設状態評価を行うことになっているが、底樋は管径が小さいため、人が中に入って点検することができず、調査に苦慮している。下水道管等の調査では、ロボットカメラも利用されているが、管内の変形や勾配を計測できるものは少ない。本研究では、手引きの監視項目として示されている底樋のひび割れや漏水のほか、機能診断における重要項目として、新たに底樋縦断勾配を現地で測定できる調査装置を開発する。
成果の内容・特徴
- 調査装置の構成を図1に示す。調査装置は、走行中に前方を確認できるカメラのほか、底樋全周を撮影するための360°カメラ、縦断勾配変化を測定するためのレーザー受光器などからなる。管径250~400mm用、管径450mm以上用があり、450mm以上用では、水深100mm程度であれば走行可能であるほか、底樋の断面変形を計測するためのLiDARセンサーを搭載可能である。
- 調査装置は、塩ビ管に水道水を流した状態で15°の勾配を登ることができる。検出できるひび割れ幅、断面の変形状態などは、搭載する機器の性能に依存する。今回試作したものは、勾配の計測分解能は±0.5°、底樋断面の計測精度は±20mmである。
- 底樋内の映像は、操縦用のフルハイビジョンカメラによってリアルタイムで確認できる。底樋全周の高精細な映像は、別途搭載した360°カメラにより撮影、保存されるので、調査装置回収後に確認する。
- 底樋出口側にレーザー光を発射するローテティングレーザーを設置し、調査装置後方にレーザー受光器を置く。レーザー光の発射角度を設計底樋勾配に設定し、レーザー受光器でそのずれを測定することにより、底樋の縦断勾配変化を±0.5°の分解能で測定することができる(図2)。
- 直径600mm、長さ約50mの底樋管を対象として行った実証試験の例を図3に示す。底樋は、1本の長さ2.43mのヒューム管を接続し、外周をコンクリートで被覆している。底樋内5箇所に円環状のひび割れを発見し、ひび割れ5の底側から湧水が発生していることを確認できた。また、縦断勾配の図や、設計図と対比した結果から、外周コンクリートの継目部分周辺でひび割れしていること(ひび割れ2、4)や、縦断勾配の変化点でひび割れしていることなどがわかり、劣化の要因の究明にも活用できる。
普及のための参考情報
- 普及対象 : ため池の管理者や自治体、点検業務を受注するコンサルタント。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国のため池底樋の機能診断調査のほか、災害時の応急点検にも活用できる。技術を移転した民間調査会社が機能診断業務を請け負うことを想定している。
- その他 : 本調査装置は、ため池底樋以外にも、人が中に入って調査することが困難な暗渠管、下水管などでも対応できる。内部に水深100mm以上のたまり水がある場合には、走行が難しい。現状では、調査装置の販売は計画しておらず、業務受注での調査あるいは機器を貸し出す等により、調査技術の普及を図る予定である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究推進事業 : ため池の適正な維持管理に向けた機能診断及び補修・補強評価技術の開発)
- 研究期間 : 2022~2025年度
- 研究担当者 : 森充広、大山幸輝、川邉翔平、金森拓也、木村優世、伊佐彩華、有吉充、新弘治((株)ウオールナット)、財部伸一((株)ウオールナット)、三門ジョシュア((株)ウオールナット)、比留間純一((株)ウオールナット)、松本悠樹((株)ウオールナット)、高岩庸博((株)ウオールナット)
- 発表論文等 : 大山ら、特願(2025年12月15日)