プレキャスト部材による農業用パイプラインのスラスト対策工法

要約

プレキャストのコンクリートブロック及び杭の組み合わせによる、現場施工が容易な農業用パイプラインのスラスト対策工法である。口径300mm以下の小口径管に対し、スラスト力作用方向の管背面側に適用することで効果が得られる。

  • キーワード : 圧力管、スラスト対策、プレキャスト工法、コンクリートブロック、杭
  • 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

農業用パイプライン等の圧力管の曲がり部またはT字の分岐部など、水の流れる向きが変化する箇所では、管を移動させようとするスラスト力と呼ばれる不均衡力が発生する。このスラスト力による管の移動を防ぐために、従来はコンクリートを現場打ちで管の周りに巻き立てる工法(以下、従来工法という)が採用されている(図1)。しかし、従来工法は、コンクリートの打設に伴う型枠組立・解体や養生に多くの労力と時間を要すること、さらに管とコンクリートが一体化するため対策箇所のみ重量が大きくなり、軟弱地盤では管の不等沈下を招くおそれがあることが課題である。
そこで本研究では、早期施工が可能で、管と対策工を一体化しない工法の開発を行った。現場での製造を必要としないプレキャスト部材(工場製品)としてコンクリートブロック(以下、ブロックという)及び杭を組み合わせ、それらをスラスト力の作用する方向に配置する工法(以下、本工法という)(図2)を提案し、現場を想定した野外模型実験によって有効性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本工法は、プレキャストのコンクリートブロックに杭を打ち込むことにより、口径300mm以下の小口径管に対して、スラスト力による管の変位を抑止する工法である。施工性の面では、コンクリートの現場打ち(型枠の組立、コンクリートの打設・養生、型枠の解体)が不要であり、杭はハンマー打撃による打ち込みのため施工が容易になり(図3)、従来の現場打ちのスラストブロックと比較して、1箇所あたりの施工に要する時間を1/2以下に縮減できる。安全性の面では、ブロックが杭の傾きを抑制することで、杭の水平抵抗力が最大限に活用できるため、管が浅く埋設され、十分な受働土圧を確保できない現場においても適用できる利点がある。さらに、管とブロックが一体化していないため、ブロックが沈下した場合に管へ被害が及ぶことがない。
  • 本工法は、ブロック(管の口径、スラスト力に応じて必要なサイズを検討して事前に作製)、杭(市販品)、ゴム板(市販品)などのプレキャスト部材によって構成される(図3)。
  • 本工法では、ブロックの自重による摩擦抵抗力、ブロック背面の受働土圧、及び杭による水平抵抗力をスラスト抵抗力として期待できる(図2)。本工法を設計する際は、土地改良事業計画設計基準設計「パイプライン」(2021年度版)(以下、設計規準という)に準じてスラスト力を計算し、それを上回るスラスト抵抗力が得られるようにブロックの大きさ、杭の長さを決定する。
  • 本工法では、原地盤から杭の水平抵抗力を十分に得るため、原地盤のN値として4.4(実証試験の実績)あるいは同程度以上であることが望ましい。
  • 図4は、T字管(図3)に内水圧をかけてスラスト力を発生させ、本工法で対策した際のスラスト抵抗力を評価した結果である。本工法以外の条件では、使用した塩ビ管の許容内圧1.0MPa以下で管の変位が急増し、継手が離脱している。一方、本工法では、1.0MPaの水圧(スラスト力としては約37kNであり、100mの水圧に相当)をかけても継手の抜け出し量は17.5mmであり、許容抜け出し量27mm以下(設計基準より算出、安全率1.5以上)である。つまり、塩ビ管の許容内圧以下で生じる管の変位を大きく抑制することが可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 農林水産省、都道府県、土地改良区。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国、管種を問わず、口径300mm以下の小口径管。
  • その他 : 軟弱地盤や干拓地等の原地盤の強度が低い地域では、杭部の水平抵抗力が小さくなる可能性があるため、本工法の適用が困難である。そのような場合には、原地盤を強度の高い砕石等に置き換えたうえで杭を打設することが望ましい。

具体的データ

図1 従来工法の概念図,図2 プレキャスト部材によるスラスト対策工法の概念図,図3 プレキャスト部材によるスラスト対策工法の必要部材及び施工手順,図4 T字管背面側の対策条件を変えた模型実験におけるスラスト抵抗挙動の比較

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2024~2025年度
  • 研究担当者 : 大山幸輝、有吉充
  • 発表論文等 :
    • 大山、有吉、特願(2024年11月26日)
    • 大山、有吉(2025)農業農村工学会論文集、321:I_183-I_191