要約
農業水利施設の機能診断調査における、現地踏査および摩耗の調査、付着強さの管理を支援するWebアプリ群である。画像処理による調査の省力化や摩耗・付着強さ等の調査・試験結果をWebGISで管理することができる。また、調査・試験結果を多様な関係者間で情報共有できる。
- キーワード : 農業水利施設、維持管理、Webアプリ、WebGIS
- 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
農業水利施設の維持管理においては、行政、民間企業、土地改良区など多様な組織が関わる。維持管理のデジタル化による効率化、高度化のためには、多様な組織間で情報を共有するデータ連携プラットフォームが必要となる。また、維持管理活動全体のデジタル化、さらにはDXのためには、その元となる情報がデジタルで扱える状態であることが前提となる。そこで、点検や調査結果のデジタル化を支援し、データをクラウド上で記録、共有するためのWebアプリケーション群(以下、本Webアプリ群)を開発する。個々のWebアプリを連携したWebアプリ群を構成することで、維持管理業務を効率的に行うことが期待できる。
成果の内容・特徴
- 本Webアプリ群は、(1)点検記録アプリ、(2)全天球カメラ共有アプリ、(3)付着データシートアプリ、(4)摩耗・粗さ定量化アプリ、の4つのWebアプリで構成される。(1)と(2)は点検作業や結果の記録として、全天球カメラの画像や動画、スマートフォンやデジタルカメラの画像や動画をコメントとともに記録および共有する(表1左)。(3)と(4)は調査を支援する。(3)は農業水利コンクリート構造物の補修工事における付着試験の結果を記録する(表1中央)。(4)はコンクリート水路や補修材料の摩耗や粗さを定量化する(表1右)。
- 記録されたデータレコード(同時に管理する写真やテキスト情報などのデータの組。以下、レコード、図1)は、写真の位置情報をもとに自動的に地図上に表示される。また、レコードは、フォルダ毎の管理やキーワードによる検索ができるため、目的のデータや写真の抽出が容易になる(表2)。いずれのWebアプリもスマートフォンやタブレット、PCからインターネットブラウザによってアクセスして利用する。Webアプリであるので、端末やOSに依存せずインターネットを閲覧できる環境であれば利用でき、現地でも事務所でもレコードの入力および即時共有が可能であるため業務の迅速化が期待できる(図1)。
- 本Webアプリに蓄積したデータ(表1)は、他の外部クラウドサービスとの相互連携が可能である(図2)。BIM/CIM共有クラウドサービスと連携した調査結果の整理を試行しており、GISおよび3次元モデルと本Webアプリのリンクを対応させることができるので、簡単にデータ連携でき、データアクセシビリティの向上が期待できる。
- 現在、25の登録機関で検証を継続しており、今後、機能拡張、変更の可能性がある。点検記録アプリは汎用的であり、日常点検だけでなく、写真管理や施設位置の記録、災害時の活用などが期待できる。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 土地改良技術事務所、土地改良調査管理事務所、建設系コンサルタント企業、土地改良事業団体連合会、土地改良区、国および自治体。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国の農業水利施設の維持管理従事者。
- その他 : 「摩耗・粗さ定量化アプリ」の一部はWebサービス企業から一般提供を開始している。試用版アカウントの用意がある。具体的な使用方法などはログイン後の画面から確認できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト)
- 研究期間 : 2022~2025年度
- 研究担当者 : 川邉翔平、森充広、金森拓也、木村優世、伊佐彩華、大山幸輝
- 発表論文等 : 川邉ら(2025)農業農村工学会誌、93:853-858