要約
監視地点の現在および数時間先の水位や浸水範囲等を表示し、管理者が水利施設を操作する際に必要とする情報を提供するシステムである。機能レイヤにある登録情報に加え、API連携により外部サービスの情報も取得できる。管理者が必要とする機能を自由に選択してシステムを構築できる。
- キーワード : 水利施設の操作支援、AI水位予測、水位データベース、リアルタイム
- 担当 : 農村工学研究部門・水利工学研究領域・流域管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
大雨が予見されると、排水機場や水門等の水利施設の管理者は警戒態勢に入り、操作に備えて待機する。その際、降水量、排水路の水位、浸水の有無やその範囲といった地区内の情報が、操作の判断材料となる。ただし農業地域では、遠隔で水位の情報を得られる地点は限られており、浸水の有無についても関係者の見回りに頼る部分が大きい。そのため、監視が必要な地点におけるリアルタイムの情報を遠隔で取得し、さらに数時間先までの水位や浸水の予測情報が得られると、水位が危険な高さまで上がる前に余裕を持って事前に操作を実施できる。また、現地を見回る際に、浸水の危険域を避けた経路を探索できる。
そこで本研究では、監視地点において現在から数時間先の水位や周辺の状況を可視化して、管理者の操作支援に活用できる情報を提供可能なシステム(操作支援システム)の開発を目的とする。
成果の内容・特徴
- 操作支援システムは、水利施設の管理者が現在および数時間先の水位や被害の予測情報を取得し、警戒体制の早期の構築や施設の的確な操作の判断に活用するためのものである。本システムは、情報を表示するアプリケーションレイヤと必要な情報を事前登録する機能レイヤから成る(図1)。機能レイヤには1)AIを活用した機能である水位予測及び異常値検知モデル、2)水位データベース(DB)に関連する機能に加えて3)サーバ連携機能があり、外部サービスからの情報を取得できる。
- アプリケーションレイヤは、適用する地区ごとに操作者が必要とする情報を選択した上で構築する(図2)。機能レイヤに登録するデータや使用する機能についても、自由に選択できる。
- 水位計から取得した値は、異常値検知モデルを活用することで信頼性を担保できる。また水位の予測では、取得した水位と観測および予報の雨の情報をAIによる深層学習の一種であるDNNモデルに入力し、1時間単位で最大6時間先までの予測水位を出力できる(図2)。
- 水位DBは、監視地点の水位と被害情報(浸水危険域、浸水深、土地利用別面積)の関係を予め整理したデータ群であり、水位と連動して被害情報を操作支援画面(図2)に出力する。水位DBの構築では、物理モデルを用いる手法と、標高を用いて簡易に推定するHAV解析の手法がある。
- サーバ連携機能により、外部サービスの情報を取得できる。例えば、外部サービスレイヤにカメラ画像の表示機能や画像解析による水位・ゲート開度等の解析機能がある場合、その情報を取得・表示できる(図3)。その他、様々な手法による予測情報の表示等の連携が想定される。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 土地改良区、国及び自治体などの農業水利施設の管理・操作に関係する者である。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国約4,000の土地改良区のうち、地域の農業水管理及び防災減災に関わる主要な水利施設を有する地区
- その他 : 機能レイヤ内に登録する情報は、管理者が事前に準備する必要がある。AIによる水位予測機能を導入する場合は、対象地点における長期の水位の観測値等を用いてAIの事前学習を行う必要がある。本システムを導入する際に必要となる様々なデータの収集、作成等の一連手法について、農村工学研究部門よりマニュアル(案)を公表する予定である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究推進事業 : A AI 等の活用による利水と治水に対応した農業水利施設の遠隔監視・自動制御システムの開発)
- 研究期間 : 2021~2025年度
- 研究担当者 : 皆川裕樹、木村延明(西九州大)、中田達、人見忠良、福重雄大、相原星哉、木村匡臣(近畿大)、三木一浩((株)クボタ)、朝稲京((株)クボタ)
- 発表論文等 :
- 木村ら(2025)農業農村工学会誌、93:87-91
- 皆川ら(2023)応用水文、35:19-28