要約
ため池の天端をセメント等の固化材を用いて固化改良して、堤体の耐震性を向上させる工法である。改良しない場合と比較すると、地震時の天端の沈下量を最大54.3%抑制できる。本工法は、改修時に既存堤体の掘削範囲が天端部に限られ、掘削土量が少ないため省力的な施工が可能である。
- キーワード : ため池、固化材、天端改良、耐震性、省力的施工
- 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設整備グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法の施行により、全国でため池改修工事が推進されている。ため池の耐震対策としては、押え盛土工法が一般的な改修工法として普及しているが、貯水容量の減少が許されない場合や、用地に制約がある場合には、必ずしも押え盛土工法が適用できないといった課題がある。そのため、近年ではため池の耐震性を向上させる目的で、固化材を用いた堤体天端の固化改良が行われる事例がある。天端を固化改良することによって、安定計算上、耐震性は向上するが、天端の固化改良の地震時の挙動について未解明である。
そこで本研究では、天端の固化改良を行ったため池堤体を対象に遠心模型実験を実施し、天端の固化改良が堤体の耐震性能や動的挙動に及ぼす影響を解明する。
成果の内容・特徴
- 本研究の改修工法はため池堤体の天端を固化改良するものであり、改修範囲が狭いため従来の改修方法と比較して既存堤体の掘削土量を削減することができ、省力的な施工が可能である(図1)。また、改修範囲にもよるが、完全に落水せず、貯水を行ったまま改修を行うことができるといったメリットを有する。
- 耐震性能を確保するために、固化改良部の目標改良強度(一軸圧縮強度)を200kN/m2程度に設定することを前提としている。
- 施設の供用期間内に1~2度発生する確率の地震動(レベル1地震動)に相当する1.5m/s2加振時において、天端の固化改良を行ったため池堤体の実規模に換算した沈下量は0.1m未満であり、固化改良により沈下を抑制することができる(図2)。発生確率は低いが地震動強さの大きな地震動(レベル2地震動)に相当する4.5m/s2の加振時においても、天端を固化改良したケースの天端沈下量は無対策の天端沈下量の54.3%に収まっている。また、レベル2地震動に対する照査指標である許容沈下量の1.0mを下回ることから、天端の固化改良により堤体の沈下が抑制される(図2)。
- 3.0m/s2の加振時において、凸部を設けた天端固化改良形状の断面は境界部での剥離を抑制する効果を持つ。レベル2地震動相当の地震動を受けた場合、堤体と固化改良部の境界で剥離が生じ、水みちや下流法面の侵食が生じる可能性がある(図3)。
成果の活用面・留意点
- レベル2地震動を対象とする設計では、堤体と固化改良部の境界において剥離が生じる可能性があるため、ため池の貯水位より高い位置で固化改良を行うなどの検討が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 大山峻一、泉明良、澤田豊(神戸大学)
- 発表論文等 :
- Ohyama S. et al. (2025) Soil Dyn. Earthq. Eng. 198:109622
- 大山ら、特願(2025年12月9日)