要約
シラン系表面含浸材を凍害対策として用いる場合、施工対象材料の含水比が小さい状態で施工した方が凍害抑制効果が大きい。施工対象材料の含水比が6%と大きい条件ではやや凍害抑制効果は低下するものの、凍害の程度はシラン系表面含浸材を塗らない場合の1/20未満である。
- キーワード : 表面含浸材、凍害、スケーリング、含水状態、施工管理
- 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
寒冷地の農業水利施設では、コンクリート中の水分が凍結する際の体積膨張とその融解の繰り返しに起因する凍害が問題となっている。凍害を受けたコンクリートでは、表面がフレーク状に剥離・剥落するスケーリングや微細ひび割れ等が発生し、施設の耐久性を低下させる要因となる(図1)。凍害の発生を抑制するためには、発生因子である水をコンクリート内部に侵入させないことが重要である。この具体策の一つとして、疎水基を有するシラン系表面含浸材をコンクリート表面に塗布・浸透させ、コンクリート表層に吸水防止層を形成することが有効と考えられる。一方で、シラン系表面含浸材を施工する際にコンクリート表面が湿潤している場合、含浸材がコンクリート内部まで浸透せず、凍害抑制効果が低下するおそれがある。
本研究では、施工対象材料の含水状態の相違がシラン系表面含浸材の凍害抑制効果に及ぼす影響をスケーリング抵抗性試験(図2 : 試験体に凍結と融解を繰り返し作用させたときに試験体が剥離した量(スケーリング量)を測定する試験)により検証し、その効果が最大化される条件を明らかにする。なお、スケーリングはコンクリート中のモルタル部分に生じる劣化であることから、本実験では含浸材を塗布する施工対象材料としてモルタル(以下、基板)を使用する。
成果の内容・特徴
- 凍結融解サイクル数が60回時点(20°Cから-20°Cまでの凍結過程4時間(凍結速度 : 10°C/h)、-20°Cの温度保持3時間、-20°Cから20°Cまでの融解過程4時間(融解速度 : 10°C/h)、20°Cの温度保持1時間の計12時間を1回とする)におけるスケーリング量の累積値を図3に示す。シラン系表面含浸材を塗布した供試体のスケーリング量は、塗布していない供試体の1/20未満であり、いずれの条件においても凍害抑制効果が認められる。
- シラン系表面含浸材を塗布した供試体における凍結融解サイクル数とスケーリング量の関係を図4に示す。シラン系表面含浸材による凍害抑制効果は施工時の基板の含水比によって異なり、含水比が小さいほど凍害抑制効果は大きい。したがって、シラン系表面含浸材は、乾燥条件で施工することが望ましい。具体的には、含浸材の種類によってスケーリングの進展挙動や発生量は異なるが、施工時の基板の含水比が6%の条件と比べて0%および4%の条件でスケーリング量が抑制される。ただし、シラン系(B)の基板の含水比4%の条件では2つの供試体間のばらつきが大きい。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、凍害の抑制を目的にシラン系表面含浸材を現地に適用する際の参考情報となる。例えば高含水状態のコンクリートにシラン系表面含浸材を施工する場合には加温によってあらかじめコンクリート表面を乾燥させる等、含浸材による凍害抑制効果を適切に発現させるための施工方法の検討に活用できる。
- 施工対象材料の含水状態がシラン系表面含浸材の凍害抑制効果にどの程度影響するかは、含浸材の成分や配合等によって異なると考えられる。したがって、現地適用の際には、施工対象の含水状態を測定するとともに、その条件でどの程度の効果が見込めるかを使用する製品ごとに照査する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 民間資金等(資金提供型共同研究)
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 金森拓也、川邉翔平、木村優世、森充広、伊佐彩華、大山幸輝、岩瀬裕之(泉建設工業)、泉伸一(泉建設工業)、豊吉明彦(泉建設工業)
- 発表論文等 : 金森ら(2024)農業農村工学会論文集、319:II_61-II_68