SfM-MVSを用いた頭首工エプロンの低コストな摩耗モニタリング手順

要約

本手法は、連続写真から被写体の3次元形状を復元する写真測量技術を用い、頭首工の3次元点群を作成し、摩耗を面的に把握する手順を示したものである。測量機器の構成によっては、従来の水準測量よりも安価かつ短時間で摩耗量測定が可能である。

  • キーワード : 3次元点群、頭首工エプロン、維持管理、摩耗、機能診断
  • 担当 : 農村工学研究部門・施設工学研究領域・施設保全グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

農林水産省では、農業農村整備における情報化施工および3次元データの活用を推進しており、頭首工のエプロンや護床工に生じる移動・沈下、摩耗等の経年劣化を3次元データで評価する取組が進められている。しかし、無人航空機や3次元レーザースキャナーなどの3次元計測機器は高価で、導入・維持コストが大きいことに加え、現地での設置や操作に専門性を要するため、作業負担が大きいという課題がある。そこで、連続写真に写る特徴点の対応からカメラ位置を推定し、画像の重なり部分を利用して3次元形状を復元する写真測量技術であるSfM-MVS(Structure from Motion-Multi-View Stereo)を用いて、頭首工エプロンの3次元点群を生成し、初期値との差分解析により摩耗量を面的にモニタリングした事例と、精度確保のための留意点を示す。

成果の内容・特徴

  • 本手法は、SfM-MVSにより作成した3次元点群を用いて、頭首工エプロンの変状を面的にモニタリングするものである。撮影は、カメラを一脚に装着し、撮影者が手にもって連続的に行う。また撮影対象内に、スケール補正を行うための測量基準点(以下、基準点)を設け、高さ方向を回転レーザー、水平方向をレーザー距離計で測量する。今回用いた測量機材一式は50万円以下で導入でき、今回対象とした頭首工エプロン(約40×20mの範囲)での計測作業は2人・6時間程度で実施できるため、従来のドローンやトータルステーションを使用する場合と比べて安価かつ簡便であり、現場での運用性に優れている。
  • 図1の手順により定期的に3次元点群を取得し、差分解析を行うことにより、変状の進行状況を面として視覚的に確認できる。差分解析により摩耗量を測定する場合には、頭首工エプロンの外側に、摩耗しない不動点を設置し、作成する3次元点群の位置合わせを正確に行うことが有効である。不動点を設置していない場合では、摩耗が生じないと見なせる部分や、形状的特徴がある部分を不動点と見なして位置合わせすることで差分解析が可能である。
  • 摩耗を対象として頭首工エプロンの差分解析を行った結果の例を図2(左上)に示す。摩耗箇所の傾向は、従来手法である水準測量(図2左下)と同等であり、最大摩耗量が生じる箇所はいずれも中央ゲート付近で、その摩耗量は200mm以上という結果が一致している。
  • SfM-MVSにより作成した3次元点群の精度を検証した結果を図3に示す。図3の計測点(赤点)において、回転レーザーで求めた実測値と、3次元点群から求めた推定値の差は、-10mmから+10mmに分布し、平均誤差は7.3mmである。これは、頭首工エプロンの摩耗量を年間2mmとすると、5年に1回程度実施する頭首工の機能診断に活用するうえで許容できる精度である。
  • 基準点を衛星測位(GNSS)により測量する場合、位置のばらつきが数十mm程度になることがある(図4)。そのため、数十mm単位の摩耗を正確に検出したい場合には、衛星測位よりも高精度に計測できる測量機材を用いる必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は、5年に1回程度行われる頭首工の機能診断に合わせて活用することを想定している。
  • 工事完了時の3次元点群が存在しない場合でも、代替的に設計図面をもとに作成した3次元点群を初期状態とすることで、差分解析を実施できる。

具体的データ

図1 変状モニタリングの流れ,図2 頭首工Aの差分解析結果例,図3 高さ計測における実測値と推定値の比較,図4 衛星測位の安定性

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2024~2025年度
  • 研究担当者 : 伊佐彩華、川邉翔平、金森拓也、木村優世、大山幸輝、森充広
  • 発表論文等 : 伊佐ら(2025)農業農村工学会誌、93:407-410