カーボンニュートラルに貢献する再生可能エネルギーを自家消費する揚水灌漑システム

要約

再生可能エネルギーである太陽光発電の電力を自家消費する揚水灌漑システムである。インバータによるポンプ運転の省エネルギー化によって太陽光発電の施設が小さくなり、設置費用の削減が可能となる。また、蓄電池の活用により、系統電力からの買電を抑制することが可能となる。

  • キーワード : 太陽光発電、ポンプ、ICT、インバータ制御、省エネルギー
  • 担当 : 農村工学研究部門・水利工学研究領域・水利制御グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、あらゆる人為的な活動の課題としてカーボンニュートラルの達成が求められており、また、農業水利施設の運用では揚水機場等を省エネルギー化し、土地改良区の電気料金の負担軽減に資する技術の開発が求められている。電気料金の負担軽減策の1つとして、農業水利施設における再生可能エネルギーの設備の導入があげられるが、現状では売電目的で設置する場合が多く、売電価格の低下により、採算性の悪化が懸念されている。
そこで、本研究では揚水灌漑地区のポンプを対象に、新たに、再生可能エネルギーである太陽光発電(以下、「PV(Photovoltaic)」という)の電力を自家消費し、ICT(情報通信技術)により把握される水利用情報をもとにインバータでポンプを制御することで省エネルギー化が可能になる揚水灌漑システムを構築し、実証試験を実施して稼働状況を把握する。

成果の内容・特徴

  • 本揚水灌漑システムは、既存のポンプにポンプ出力を調整するインバータと、PV施設を付加することで構築される。
  • 対象としたのは、面積5.6haの水田灌漑の地区で、小型の配水槽を経てパイプラインで農地へ配水される。ポンプは片吸い込み渦巻ポンプで、出力7.5kW、流量1.8m3/min、揚程15mである。
  • インバータの導入により、ポンプ消費電力は灌漑期間の平均で7.5kWから1.6kWに低減される(図1)。ポンプにインバータを導入し消費電力を抑制することで、太陽光パネルの枚数やPCS(Power Conditioning System)および蓄電池の容量等の関連する施設の規模が小さくなり、設置するスペースを狭く、設置に要する費用を低くすることが可能となる。
  • PV施設の導入状況と諸元を図2に示す。インバータの導入によってPVに関連する施設の規模が小さくなるため、必要となる太陽光パネル等のスペースは、ポンプ場の屋根上と敷地の一部である。
  • PV施設の実証試験の結果を図3に示す。また、図3中の時間区分(t1~t7)毎のPV施設の稼働状況を表1に示す。本実証試験では、時間区分t1からt5では段階的にポンプ消費電力を増加させ、t5とt6の間でPVを停止させる制御を行う。PV電力とポンプ消費電力に応じて、蓄電池の充電および放電の電力を適宜調整することで、余剰電力の有効活用が図られ、系統電力からの買電を抑制した運用が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • 農業水利施設において再生可能エネルギーを自家消費するシステムを構築することで、売電価格の低下や買電価格の高騰による採算性の悪化を抑制することが期待できる。
  • PV施設の規模を設定する際は、太陽光パネルの設置スペースや、余剰電力の売電も含めた採算性を考慮して決定する必要がある。

具体的データ

図1 ポンプの稼働状況,図2 PV施設の導入状況と諸元,図3 PV施設の実証試験の結果,表1 PV施設の稼働状況

その他

  • 予算区分 : 環境省(地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業 : 農業水利システムにおける再エネを導入した揚水灌漑・余剰水力利用によるCNの実証)
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 人見忠良、中矢哲郎、長谷川文夫(株式会社IHI)、稲村彰信(株式会社IHI)、岡本茂(株式会社荏原製作所)、牧瀬寿幸(豊川総合用水土地改良区)
  • 発表論文等 : 中矢ら(2024)農業農村工学会誌、92:555-558