温室内環境を安定して測定可能にするセンサー故障検出アルゴリズム

要約

温室内のセンサー故障は、温室内の環境の把握を困難にし、収量低下をもたらすことがある。そこで、三つ以上のセンサーを用い、センサー故障時も持続的に正しい環境計測値の出力を可能とするアルゴリズムを提案する。

  • キーワード : 施設園芸、温室栽培、環境センサー、環境制御
  • 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、温室内の気温などの環境要素は栽培環境の最適化のために精密に制御されている。一方で、制御用のセンサーが、一つの環境要素(温度や湿度など)につき一つである場合、センサー故障時に環境制御が不能になる。したがって、温室栽培には、センサー故障による温室内の環境の不安定化により発生する作物の収量の低下などの大きなリスクが存在している。そこで、三つ以上の環境センサーを用いて、センサーの故障検知や異常値を除いた補正値の出力を可能とするアルゴリズムを考案する。上記のアルゴリズムを用いることで持続的に安定した環境測定・制御が可能となる。

成果の内容・特徴

  • 本研究成果では、一つの環境要素を複数のセンサーで計測し、不具合の発生したセンサーの検知に加え、異常値を出力するセンサーの測定値を除いた補正値の出力を可能とするシステムを開発する。なお、考案する仕組みは、落雷などにより複数のセンサーが同時に故障するようなケースでは対象外である。
  • 考案するアルゴリズムを示すフローチャートを図1に示す。測定開始後、三つのセンサーの測定値を取得し、普段はそれらの平均値を測定値として扱う(A、B、C)。また、センサーの劣化の発生時に、センサー間の測定値のバラツキが大きくなると仮定し、センサーの健全度合の監視のため、変動係数を出力する(D)。センサーの測定値の差の絶対値が閾値よりも小さいかを確認し、センサー異常の判断および不具合の発生したセンサーの特定を行う(E、F)。閾値は、センサーの個体差や器差などを考慮し決定する。センサーに不具合が発生している場合は、不具合の発生したセンサーの値を除いた平均値(補正値)を出力し、センサー故障時も持続的に正しい環境計測値を出力する(G)。
  • 図2に図1のフローチャートのアルゴリズムを実装したシステムを示す。本システムは、マイコンに温度センサーおよび湿度センサーを三つずつ接続する構成としている。動作試験は、三つのセンサーの一つに疑似的に不具合を発生させ、その時のセンサーの不具合に対するシステムの動作を確認することで行う。不具合発生時の変動係数および補正値を記録し、システムが正常に動作しているかを確認する。下記に、動作試験の具体的な方法を示す。測定開始後に、気温20°C、相対湿度28%の実験室内で温度センサーおよび湿度センサーの一つに疑似的に不具合を発生させる。温度センサーは、計測開始後30~40秒後に約30°Cの熱源で、30秒程度加熱し不具合を発生させる。湿度センサーは、計測開始後30~40秒後に呼気を送風し不具合を発生させる。
  • 図3に本システムの動作試験の結果を示す。温度センサーおよび湿度センサーの動作試験時、センサー3に不具合が発生したのち、測定値の平均値が実際の値よりも増加する。一方で、出力された補正値は、不具合の発生したセンサーの測定値を除いた値である。したがって、本システムを温室栽培に利用すると、センサーに不具合が発生しても持続的に安定した環境測定・制御につながる。
  • 温度センサーおよび湿度センサーに不具合発生後、変動係数が上昇する(図3)。センサーの劣化の発生時に、センサー間の測定値のバラツキが大きくなると仮定すると、変動係数を出力することで、センサーの健全度合の監視に利用できる可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • 温室栽培に用いられる、環境測定・制御機器に、開発したアルゴリズムを組み込むことで、センサー故障による、作物の収量低下のリスクを抑えることができる。
  • センサー故障が検知された際に、不具合のあるセンサーのみ交換もしくはすべてのセンサーを交換することで、記録データの欠損を防ぐと同時に安定した環境測定・制御の実現につながる。
  • CO2センサーのように、使用時間に比例して出力値が変化する種類のセンサーに関しては、劣化による出力値のバラツキが発生しにくいため、センサーの健全度合の監視に変動係数を利用することは不適と考える。

具体的データ

図1 環境計測プロセスを示すフローチャート,図2 センシングシステム結線図,図3 センシングシステム動作試験の結果

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2021~2025年度
  • 研究担当者 : 大橋雄太、土屋遼太、石井雅久、於保拓高、関航太郎、森山英樹
  • 発表論文等 :
    • 大橋ら「センサー状態判定装置、センサー状態判定システム、センサー状態判定方法、管理システム、センサー状態判定プログラム、及び記録媒体」特開2024-063645(2024年5月13日)
    • 大橋ら(2025)農業施設、56:51-55