農業集落排水汚泥を原料とする汚泥肥料の製造実態と肥効特性

要約

農業集落排水汚泥を原料とする汚泥肥料の製造方法としては、発酵槽内を加温・通気させる密閉型コンポスト化が主流である。同方法で製造された汚泥肥料の易分解性有機物量と無機態窒素の割合のばらつきは他の方法よりも大きく、ク溶性リン酸の割合は機械乾燥した汚泥肥料よりも高い。

  • キーワード : 汚泥肥料、密閉型コンポスト、易分解性有機物量、窒素肥効、リン酸肥効
  • 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

化学肥料の代替として汚泥肥料を使用することは、国内資源の利活用を促進し、みどりの食料システム戦略の目標達成に寄与する。汚泥肥料の製造方法は様々あるが、農業集落排水(以下、「集排」とする。)施設で肥料化する方法として開放型コンポスト化、密閉型コンポスト化、機械乾燥、天日乾燥がある。それらの製造方法によって製造される肥料の肥効特性が異なると考えられるが、集排汚泥肥料の製造方法の詳細やその肥効特性は整理されていない。
そこで本研究では、全国の集排施設29か所を対象に現地調査を行い、集排汚泥肥料の製造方法の種類と詳細な製造条件の整理、および製造方法による集排汚泥肥料の肥効特性への影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 農業集落排水汚泥を原料とする汚泥肥料の製造方法としては、狭い敷地で少ない汚泥発生量でも肥料化が可能で、発酵槽内を加温・通気させ、微生物による汚泥中の易分解性有機物の分解を促進する密閉型コンポスト化が多く、約62%を占める(図1)。
  • 3種類の製造方法における肥料中の易分解性有機物量は、それぞれ異なる特徴がみられる(図2)。開放型コンポスト化は長い時間をかけて易分解性有機物を分解するため、易分解性有機物量が少ない。一方、機械乾燥では機械設備を用いて熱風で急速乾燥させるため、易分解性有機物が分解されず、製造される汚泥肥料中の易分解性有機物量が多い。また、密閉型コンポスト化は施設によって製造温度や期間等の製造条件が異なり、開放型コンポスト化と機械乾燥の中間的な製造方法となるため、汚泥肥料中の易分解性有機物量は開放型コンポストと機械乾燥汚泥の間に分布し、施設間のばらつきが大きくなる。易分解性有機物量が多く残存していると、品質や保存性、施用後の有機物の分解性に影響する可能性がある。
  • 肥料の窒素肥効のうち、極めて速効的な成分を示す全窒素に対する無機態窒素の割合は、開放型コンポストは11~23%、密閉型コンポストは7~35%、機械乾燥汚泥は1~6%であり、密閉型コンポストの窒素肥効は易分解性有機物量と同様にばらつきが大きい(図3)。
  • 肥料が含有するリン酸全量のうち、緩効的だが植物に利用されやすいリン酸成分量を推定するための分析法のひとつに「ク溶性リン酸」があり、全リン酸に対するク溶性リン酸の割合をリン酸肥効の指標とする。製造方法別のリン酸肥効は、開放型コンポストは74~83%、密閉型コンポストは52~97%、機械乾燥汚泥は28~50%であり、密閉型コンポストのリン酸肥効は他方法と同程度のばらつきであり、機械乾燥汚泥よりも高い(図3)。
  • 密閉型コンポストに着目すると、施設管理者が容易に把握できる製造温度や製造期間等の製造条件と窒素・リン酸肥効のそれぞれの間には明確な関係は確認できない(図3)。一方で、製造温度が100°C以上、製造期間が数時間以内の機械乾燥汚泥では、無機態窒素の割合が低く、ク溶性リン酸の割合も低い傾向がある。

成果の活用面・留意点

  • 肥料化設備の選定や、汚泥肥料の施肥設計に利用可能な情報である。
  • 汚泥肥料(特に、乾燥汚泥や一部の密閉型コンポスト)の施肥設計にあたっては、肥料中の有機態窒素は土壌施用後に無機化するため、その無機化分についても考慮する必要がある。

具体的データ

図1 集排施設の肥料化方法の内訳,図2 汚泥肥料由来の累積バイオガス発生量,図3 全窒素に対する無機態窒素の割合と全リン酸に対するク溶性リン酸の割合への製造温度と製造期間の影響

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(スマート農業技術の開発・実証・実装プロジェクト)、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間 : 2022~2025年度
  • 研究担当者 : 藤田睦、中村真人、折立文子、井原啓貴、宮本豊尚(土木研)、吉原茜
  • 発表論文等 : 藤田ら(2025)農業農村工学会論文集、93:IV_13-IV_16