畑地型酪農地域の畑作における消化液施用と牛糞堆肥施用・化学肥料施用の代替性

要約

畑地型酪農地域である対象地域では畑作における牛糞堆肥の連用が一般的であり、肥効特性を反映して消化液施用との代替性は低い。一方、消化液施用と化学肥料施用の代替は小麦作の基肥施用において確認でき、代替による肥料費削減効果は追肥含む小麦作全体で25~55%と試算される。

  • キーワード : 集中型畜産バイオガスプラント、畑作、消化液、牛糞堆肥、化学肥料、小麦作
  • 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

北海道では酪農経営の多頭化が進行し、糞尿処理技術として集中型畜産バイオガスプラントの建設が進んでいる。バイオガスプラントの運営では、メタン発酵後に副産物として生成する消化液の最終処理が問題となるが、地域内に酪農と畑作の両方が存立している畑地型酪農地域では、畑作における消化液の液肥利用の推進がその有力な解決策となりうる。一方、畑地型酪農地域では、従来牛糞堆肥が畑作に利用されていることは知られているが、消化液施用が牛糞堆肥施用を代替しているのかどうかは不明である。また、消化液施用が化学肥料施用を代替しているのかどうかについても十分に明らかになっていない。
そこで本研究では、集中型畜産バイオガスプラントが稼働し、消化液の畑作利用が進んでいる北海道十勝管内の畑地型酪農地域(北海道A町)を対象として、畑作における消化液の施用実態と、牛糞堆肥ならびに化学肥料の施用実態との関係を分析し、消化液施用と、牛糞堆肥施用ならびに化学肥料施用に代替性があるかどうかを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 対象地域の畑作に施用可能な畜産糞尿に由来する有機物のうち主なものは、畜産バイオガスプラントの消化液のほか、地域の酪農家から容易に入手可能な牛糞堆肥、スラリーである。対象地域では牛糞堆肥を連用する畑作経営の割合が大きく、畑作への牛糞堆肥施用は一般的である(図1)。
  • 牛糞堆肥の投入頻度により対象地域の畑作経営をグループ化し、各グループの消化液施用の有無を確認したところ、牛糞堆肥の投入頻度と消化液施用の有無に明確な関連は確認できない(表1)。消化液の肥効特性は無機態窒素を多く含むため速効性、堆肥の肥効は有機態窒素を多く含むため遅効性と整理できることから、消化液施用は、同様に無機態窒素で構成される化学肥料施用を代替しうると考えられる一方、長期的な地力向上につながる牛糞堆肥施用を代替しにくいためと考えられる。
  • 対象地域の畑作経営のうち、小麦作に消化液を基肥施用する畑作経営の半数以上が化学肥料を基肥として施用していない。これらの経営では、小麦作の基肥における消化液施用が化学肥料施用を完全に代替している(表2)。なお、対象地域のバイオガスプラント消化液の窒素成分量を用いて推計した10aあたりに基肥として施用された窒素の成分量は、すべての経営で施肥標準を上回っている。
  • 対象地域では、秋小麦の越年後春期の追肥における消化液施用は確認できない。小麦作基肥に消化液を施用する畑作経営の経営実態調査の結果から、標準栽培体系と比較して、小麦作において消化液を基肥施用することによる肥料費削減効果は基肥部分で40~50%、追肥含む全体で25~55%と試算される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 集中型畜産バイオガスプラントの稼働地域や建設予定地域において、畑作における消化液の液肥利用を推進するにあたっての参考情報となる。
  • 本成果は、家畜糞尿由来の資源循環を地域全体に対して積極的に行っている地域の調査事例であり、そのような取り組みを推進する地域にとっての参考情報となる。

具体的データ

図1 対象地域畑作経営の牛糞堆肥施用頻度,表1 対象地域畑作経営の牛糞堆肥施用頻度と消化液施用の有無,表2 対象地域で小麦作の基肥に消化液を施用する畑作経営の消化液施用量と化学肥料基肥施用実態,図2 小麦作基肥への消化液施用による肥料費削減効果

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(農林水産研究推進事業 : 脱炭素型農業実現のためのパイロット研究プロジェクト)
  • 研究期間 : 2021~2025年度
  • 研究担当者 : 芦田敏文、佐藤正衛、藤田直聡、荻野曉史
  • 発表論文等 :
    • 芦田ら(2025)農業経営研究、63(2):76-82
    • 芦田ら(2024)農業経営研究、62(2):19-24