農山漁村における農林水産業エネルギーデータの統合管理基盤

要約

農林水産業の多様なエネルギー需給・環境データを統一管理するため、VEMS向けに標準時同期で時刻を補正し30分値へ自動整形する分野横断型データベースを構築する。これにより、仮想発電所に必要な需給予測・最適化・可視化へ直接活用できる基盤を実現する。

  • キーワード : 農林水産業エネルギーデータ、農林水産業データ統合、エネルギー時系列データ、VEMS/VPP連携、需給予測・最適化
  • 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS)の構築においては、農業・林業・水産業に存在する多様な需要施設と、多岐にわたる設備機器のデータ、さらに環境データ(温度等)を統合的に扱うデータベースが不可欠である。電力需給の調整は30分単位で行われ、需給バランスをとるためには、3時間先あるいは1日先といった短期予測が求められる。また、これらの短期需給調整は、分散した需要・供給リソースを束ねて制御する仮想発電所(VPP)の運用においても重要であり、そのためには分野横断的に整合した時系列データの整備が前提となる。しかし現状では、農林水産業におけるデータの取り扱いは分野ごとに大きく異なり、データ形式、取得手段、収集周期などが統一されていない。その結果、取得データの利活用が困難となり、特にデータロガーの時刻ずれなど、管理上の課題が顕在化している。本研究の狙いは、VEMSに必要となるエネルギー需要予測および最適化に資するデータ基盤を整備することである。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、農業・林業・水産業にまたがるスマートメーター値・環境データ・設備機器のデータを統一形式で扱うことができる分野横断型エネルギーデータベース基盤であり、VEMSに必要となるエネルギー需要予測および最適化に資するデータを提供するものである(図1)。具体的には、農山漁村の主要分野で取得されるエネルギー需要データ(スマートメーター値、各施設の実測値)、設備機器情報、環境データ(外気温・施設内温度など)について、分野横断的な取得周期や記録方式を整理し、これらを自動前処理により統一的に扱うことができる。
  • 前処理において、各施設のロガーでは、取得・記録タイミングの差により生じる記録時刻のずれを、情報通信研究機構(NICT)が提供する日本標準時NTPサーバーに基づいて時刻を補正することで、施設ごとの差異を解消し、全データを電力業界で標準的に扱われる30分値へ整形している。それにより、VPP運用に必要な時系列整合性を確保している(図2(a))。
  • また、取得周期の異なる生データ(1分値・5分値・任意周期)を自動前処理により清掃・補間し、電力取引で用いられる30分値へ統合変換する処理フローを実装(図2(b))しており、農林水産業特有のばらつきを持つデータを、VPP運用や最適化計算に直接利用可能な形式へ標準化し、データベース格納のためデータ構造を統一している。これにより、農山漁村地域での高度な需給マネジメントの実現につながるデータ基盤の構築を図る(図2(c))。
  • 外部の需要予測モデルや最適化エンジンからAPI経由でデータ取得・結果返却ができる構造とし、最適化前後の需給曲線を可視化ダッシュボードで比較できる仕組みを搭載している(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本データベースは、農林水産業の分野横断データを30分値で統一管理できるため、需給予測モデル・最適化エンジン・DR制御ロジックなど多様なエネルギー分析へ直接利用できる。
  • 電力・重油・ガス等のエネルギーデータや環境データの自動収集により、これまで困難であった施設運転の実態把握やCO2排出評価の自動化が可能となり、運用改善・省エネ判断に活用できる。
  • 一方で、実証先ごとに設備構成やロガー仕様が異なるため、メタデータの標準化やデータ品質チェックの運用が不可欠であり、また対応可能なセンサー種が限定される点に留意が必要である。

具体的データ

図1 農山漁村向け分野横断エネルギーデータベース基盤の概要,図2 VEMS実現に向けた農林水産業データの統合・提供プロセス

その他

  • 予算区分 : SIP
  • 研究期間 : 2023~2025年度
  • 研究担当者 : 木村健一郎、遠藤和子
  • 発表論文等 : 木村ら(2026)農研機構研究報告、25:75-79