農林水産地域のRE100に資する農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS)

要約

農山漁村地域には太陽光、水力、風力、地熱、バイオマス等の多様な再エネがあるが、再エネの地産地消は進んでいない。VEMSは地域内での電力/熱の供給量と需要量を計測、最適管理することによりエネルギーの地産地消を進め、その対価を地域に還元し経済循環を生み出すものである。

  • キーワード : 再生可能エネルギー、地産地消、脱炭素、サーキュラーエコノミー、地域再生
  • 担当 : 農村工学研究部門・資源利用研究領域・地域資源利用・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

農山漁村地域には太陽光、水力、風力、バイオマス等の再エネがあり、2012年から開始された再エネの固定価格買取制度(FIT : Feed-in Tariff)により、全国に様々な発電所が設置されている。2010年度の日本の電源構成に占める再エネ電力の割合は10%以下であったが、2022年度の再エネ電力の割合は22%まで増えている。しかし、FIT制度は発電者側に有利なインセンティブがあるため、海外と比べて再エネの地産地消の取り組みが遅れている。今後、国は、FIT制度からフィードインプレミアム(FIP : Feed-in Premium)やJ-クレジット等の新しい制度に移行する方針であるが、再エネを持続的に供給するには、主要な供給元である農山漁村地域にエネルギー生産の対価を還元して経済循環を生み出す仕組みと、地域内でエネルギーを地産地消するための技術開発が求められている。
本研究では、農山漁村地域に賦存する太陽光、水力、風力、地熱、バイオマス等の再エネ電力に加え、農林地の地中熱や農業用水の流水熱などの再エネ熱も含めてエネルギーを地産地消するための技術として農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS : Village Energy Management System)を開発し、地域内のエネルギー自給率向上に資する技術の構築を目指す。このような取り組みにより、エネルギー需給に関わる対価は地域に還元され,地域活性化につながることが期待される。

成果の内容・特徴

  • VEMSは図1に示すように、左側のエネルギー供給群と右側のエネルギー需要群の需給バランスを、地域全体で計測し、最適に制御、管理を行う仕組みである。そのため、農山漁村地域にある太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオマス発電等を単体で運用するのではなく、集約・連携させる。そのうち、太陽光発電では余剰電力が生じることがあるため、蓄電池の利用に加え、農業用水のインフラを活用する揚水発電等も想定し連携させる。このような取り組みにより、地域内のエネルギー供給が安定化し、エネルギーの地産地消が推進される。
  • VEMSはエネルギー供給エリア全体を対象とするエリアEMS(A-EMS)と、個々の需要家を対象とするローカルEMS(L-EMS)の2階層で構成される。VEMSは、階層2のL-EMSにおいて、温室、畜舎、食品加工場、住宅等における自家のエネルギー需要量と発電、蓄電、蓄熱の不足量、ヒートポンプの稼働状況などの情報を、上位にある階層1のA-EMSに伝達し、太陽光、揚水、小水力、メタンガス、バイオマス等の発電や蓄電の状況を計測・制御しつつ地域内に再エネ電力を供給し、地域内で不足するときは地域外から系統電力を導入する(図2)。
  • VEMSの社会実装進める上で重要なのがアグリゲーターの存在である。アグリゲーターはA-EMSとL-EMSの調整を行うとともに、エネルギー対価の受け渡しを行う。また、農山漁村地域は再エネ電力のポテンシャルが豊富にあるので、都市・周辺地域に向けて食料や農産品の供給に加え、再エネ電力も合わせて供給することにも貢献する(図3)。
  • VEMSが社会実装したときのイメージを図4に示す。温室、畜舎、食品加工場、住宅などのエネルギー需要データに基づき、太陽光発電、揚水発電、小水力発電、メタンガス発電、バイオマス発電等のエネルギー供給を制御し、地域内で不足するときは地域外から電力を導入するなど、エネルギー価格や環境価値も加えてエネルギーの需給調整を行う。

成果の活用面・留意点

  • 本研究はVEMSの概念と考え方を取りまとめたものでる。VEMSの社会実装に向けた機器やアプリケーションの開発は関連するステークホルダーとともに展開中である。
  • わが国では2030年までに、電源構成の中で再エネの占める割合を36~38%にすることを目指しているが、この目標を達成するには再エネの主要な供給源である農山漁村地域にエネルギー生産の対価が還元されるビジネスモデルとVEMSの社会実装が必要である。

具体的データ

図1 農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS),図2 VEMSを構成する2階層モデル,図3 アグリゲーターによるVEMSのネットワークモデル,図4 農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS)のイメージ図

その他

  • 予算区分 : 交付金、経済産業省(新技術先導研究プログラム)、SIP
  • 研究期間 : 2021~2025年度
  • 研究担当者 : 石井雅久、土屋遼太、中村真人、芦田敏文、渡邉真由美、木村健一郎、遠藤和子、後藤眞宏、森山英樹、大谷謙二(産総研)、西宏章(慶應義塾)、田邉新一(早稲田大学)、岩船由美子(東京大学)、日高平(京都大学)、中島理(三菱電機(株))、馬上丈司(千葉エコ・エネルギー(株))、高杉真司(ジオシステム(株))、林泰正(ホルトプラン(同))
  • 発表論文等 :
    • 石井ら(2025)農業農村工学会誌、93:747-750
    • 石井ら(2024)「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構成果報告書データベース」
      https://www.nedo.go.jp/library/database_index.html (2024年11月12日)