ナスのとげなし性を判別するDNAマーカー
要約
ナス品種「とげなし千両二号」が有するとげなし性は、第6染色体の遺伝子座Plによって制御される。遺伝子座Plに連鎖するIndelマーカーによって、とげのある個体ととげのない個体を容易に判別できる。
- キーワード:ナス、育種、DNAマーカー、とげなし、Indel
- 担当:野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・施設野菜花き育種グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
国内のナス品種の多くは茎葉やがくに鋭いとげがあり、整枝、誘引、収穫等、種々の作業の妨げとなっている。また、輸送中に果皮を傷つけ、商品価値を低下させるリスクともなる。こうした問題に対して、民間種苗会社や公立研究機関から、とげのないナス品種が開発され、一般的な特性となりつつある。そこで、本研究では、市販品種「とげなし千両二号」(タキイ種苗株式会社)が有するとげなし性遺伝子座を詳細にマッピングし、育種過程で効率的にとげなし個体を選抜するDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
- ナス品種「とげなし千両二号」が有するとげなし性は、第6染色体に座乗する主働遺伝子座Pl(Prickle)によって制御される劣性形質である。これはナスのとげなし性遺伝子座に関する世界初の知見である。
- 「とげなし千両二号」と、とげのあるナス系統LS1934を両親とするF2集団および、その自殖後代集団を用いた原因遺伝子座の絞り込みから、とげなしの原因となる候補遺伝子の座乗位置を133kbの物理地図上に絞り込んだ。この領域の「とげなし千両二号」由来のアリルには0.5kbの欠失変異が存在する(図1)。
- この変異領域を挟む1組のIndelマーカーにより、「とげなし千両二号」ホモ接合型を選抜することで、とげのない個体をアガロースゲル電気泳動等の簡易な方法で容易に判別できる(図2)。プライマー配列は以下の通りである。
pl_indel_0.5k(fwd;5'-CGTTACATGCATAATAAACCTACGC-3'、rev;5'-CAAAGCCGCAGCCTACTG-3')
- 本研究でPl座に見出された「とげなし千両二号」型の欠失変異は、とげのない品種・系統に特徴的であり、世界のナスを代表する100点のコアコレクション(https://www.gene.affrc.go.jp/databases-core_collections_ep.php)のうち、とげのない12点全てに同様の欠失変異がホモ接合型で見られる。
成果の活用面・留意点
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2020年度
- 研究担当者:宮武宏治、齊藤猛雄、布目司、山口博隆、根来里美(名古屋大学)、大山暁男、呉健忠、片寄裕一、福岡浩之(タキイ種苗株式会社)
- 発表論文等:Miyatake K. et al. (2020) Breed. Sci. 70:438-448