安定して強い根こぶ病抵抗性を有するナバナ品種「CR早生-B1」

要約

「CR早生-B1」はハクサイ由来の抵抗性遺伝子座の導入により育成された安定して強い根こぶ病抵抗性を有するナバナ品種である。既存の在来品種と同等の収量性および食味を持つ。

  • キーワード:ナバナ、アブラナ科野菜、病害抵抗性、DNAマーカー、種間雑種
  • 担当:野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・露地野菜花き育種グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

根こぶ病はアブラナ科植物全般をおかす難防除の土壌病害であり、根に形成されるこぶの肥大により養分の吸収が阻害されるため大幅な減収または枯死を引き起こす。主に茎葉を利用するナバナにおいては、既存の抵抗性品種および系統は抵抗性が十分に付与されていない。そこで、抵抗性遺伝子を有するハクサイをキャベツに交配して作出した合成ナプスへの在来ナバナ品種の連続戻し交配およびDNAマーカー選抜により、安定して強い根こぶ病抵抗性を持つナバナ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「CR早生-B1」はキャベツ「うめ吉」を種子親、根こぶ病抵抗性のハクサイ安濃12号(現在の「はくさい中間母本農9号」)を花粉親に用いた種間交雑を行い、胚珠培養および自然倍加により得られた合成ナプスに、在来ナバナ品種「長島在来」(系統は「長島在来1」を使用)を反復親にした連続戻し交配とDNAマーカー選抜を用いたCrr1根こぶ病抵抗性遺伝子の導入により育成した固定品種である(図1)。
  • グループ2およびグループ4の根こぶ病菌株を用いた幼苗接種検定において、「CR早生-B1」の根こぶ病発病指数は2カ年ともに「長島在来」および既存の抵抗性ナバナ系統「系統8」より低く、安定して強い根こぶ病抵抗性を有する(図2)。
  • 「CR早生-B1」の全収穫期間における可販収量は「長島在来」および「系統8」と同程度であり、食味の総合評価は「長島在来」および「系統8」と同程度である(表1、図3)。

成果の活用面・留意点

  • グループ2およびグループ4の根こぶ病菌に対して強い抵抗性を有する本品種は、グループ4の根こぶ病菌による被害が発生している三重県における普及が見込まれる。
  • グループ1およびグループ3の根こぶ病菌の出現と加害する未知の菌株の発生を防ぐため輪作体系の導入や薬剤の使用などを含む総合防除が望ましい。

具体的データ

図1 「CR早生-B1」の系譜図,図2 「CR早生-B1」の根こぶ病発病指数,表1 「CR早生-B1」の収量特性,図3 「CR早生-B1」および対照品種「長島在来」の収穫物

その他

  • 予算区分:交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間:2007~2020年度
  • 研究担当者:小原隆由、畠山勝徳、川崎光代、柿崎智博、石田正彦、板橋悦子、吹野伸子、北村八祥(三重農研)、戸谷孝(三重農研)、小堀純奈(三重農研)、小栗速斗(三重農研)、丹羽千紘(三重農研)、森川保洋(JA全農みえ)、小泉智紀(JA全農みえ)、宮崎博之(JA全農みえ)、船木章博(JA全農みえ)、岡本雅至(JA全農みえ)
  • 発表論文等:小原ら「CR早生-B1」品種登録出願公表第35917号(2022年6月7日)