キュウリうどんこ病高度抵抗性に関与するQTL
要約
「きゅうり中間母本農5号」が有するうどんこ病高度抵抗性には少なくとも4個のQTLが関与する。特に、第5染色体上に座乗する最も大きな効果をもつQTLpm5.3とその近傍に位置するpm5.1を両方もつ個体は強い抵抗性を有する。
- キーワード:キュウリ、定量的評価法、うどんこ病抵抗性、QTL
- 担当:野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・育種技術開発グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
キュウリうどんこ病は、古くから問題になっているにも関わらず毎年多くの被害が出ている重大な糸状菌病害である。一定の抵抗性を持つ品種は存在するが、抵抗性を示すのは25°C前後の比較的高い温度域で、20°C前後では罹病する品種が多く報告されており、温度に関係なく抵抗性を示す品種の開発が求められている。農研機構が開発した「きゅうり中間母本農5号」は、20°Cでも極めて強いうどんこ病抵抗性を示す有望な抵抗性素材である。しかし、本中間母本が有するうどんこ病抵抗性遺伝子についての詳細な情報は明らかになっていない。そこで、本研究では「きゅうり中間母本農5号」に由来する分離集団を材料として、画像解析を用いた定量的な抵抗性評価値に基づき、うどんこ病抵抗性に関わるQTLを同定する。
成果の内容・特徴
- 抵抗性品種「きゅうり中間母本農5号」と罹病性品種「加賀青長節成」の交配から得られた分離集団について、うどんこ病菌を接種したリーフディスクの撮影画像を解析することによって、定量的な抵抗性の評価値DI(Disease Index)が得られる(図1)。
- 分離集団について抵抗性の評価値DIを調査すると二峰性の連続的な分布を示す。両親のDIは分布の両端に位置する(図2)。
- QTL解析を行うと、第5染色体の70.8cM (キュウリ参考配列「Chinese Long」v3上の28.9Mb)の位置に20°Cで寄与率が37%、25°Cで寄与率が43%の大きな効果をもつ遺伝子座pm5.3が検出される。また、20°Cで第1染色体の55.7cM(24.8Mb)の位置に寄与率が2%の小さな効果をもつ遺伝子座pm1.1が検出される(図3a)。
- pm5.3をホモ接合にもつ部分集団を用いてQTL解析を行うと、20°Cではpm1.1に加えて第3染色体の61.1cM(29.9Mb)の位置にpm3.2が検出される。また、20°Cおよび25°Cで第5染色体の39.2cM(19.7Mb)の位置にpm5.1が検出される(図3b)。
- pm5.1は、大きな効果をもつpm5.3の近傍に位置する遺伝子座であり、第5染色体の2遺伝子座を両方もつ後代は低いDIを示し、強い抵抗性を有する傾向にある(表1)。
成果の活用面・留意点
- うどんこ病の接種はPodosphaera xanthiiの単胞子分離した菌系pxB(https://doi.org/10.1007/s00122-008-0885-1)を用い、リーフディスクによる20°Cおよび25°Cの抵抗性を評価したものである。
- 「きゅうり中間母本農5号」を素材として、新たな品種に第5染色体の2遺伝子座を効率よく導入するためには、当該領域を容易に検出できる選抜マーカーを開発する必要がある。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2015~2020年度
- 研究担当者:下村晃一郎、杉山充啓、川頭洋一、吉岡洋輔(筑波大学)
- 発表論文等:Shimomura K. et al. (2021) Breed. Sci. 71:326-333