生育モデルに基づいたブロッコリーの花蕾重予測

要約

日積算日射量、日平均気温、栽植密度および葉面積を入力することで花蕾重を算出するブロッコリーの生育モデルを作成する。

  • キーワード : 生育モデル、日射量、気温、収量予測、ブロッコリー
  • 担当 : 野菜花き研究部門・露地生産システム研究領域・露地野菜花き生産管理システムグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

収穫作業時の労働不足による圃場廃棄を回避し、契約取引に必要な出荷情報を取得するには、生育を予測する必要がある。そこで本研究では、ブロッコリーについて、日射量、気温等の環境情報から生育量を算出する生育モデルを作成し、気象予測に基づいて生育を予測する。このとき、春作と秋作による作期の違いや生産地によって異なる栽植密度に対応できる生育モデルを作成する。収穫適期として花蕾の出荷規格が維持される期間である±3日以内の花蕾重を、定植後12~23日目の苗の重量に基づいて予測する。

成果の内容・特徴

  • ブロッコリーの生育モデルは、寒候期キャベツの結球重増加モデル(2015年度野菜茶業研究成果情報)と同様に、日積算日射量、日平均気温、栽植密度および葉面積を入力することで収穫物である茎・花蕾新鮮重を算出するために、吸光係数、日射利用効率、茎・花蕾乾物分配率、茎・花蕾乾物率を係数として用いる(図1)。
  • 積算受光量は、栽植密度、葉面積、葉面積指数(LAI)、吸光係数および日積算日射量から算出する。積算受光量と地上部乾物重との関係は、作期や栽植密度が異なっても、ほぼ同一の回帰直線上にプロットされる(図2)。この回帰直線の傾きが、日射利用効率であり、乾物生産の効率を示す。
  • 茎・花蕾分配乾物率は積算気温の増加に伴い、シグモイド型に増大し、栽植密度が異なっていても同様の推移を示す。一方、春作では秋作よりも少ない積算気温から茎・花蕾分配乾物率の増加が始まる(図3)。したがって、茎・花蕾乾物分配率は作期の影響を考慮しなければならない。
  • 定植後12~23日目の苗の重量に基づいた生育モデルの予測花蕾重は実測花蕾重との間に高い相関(決定係数0.98)がみられ、予測精度(実測花蕾重から予測花蕾重を引いた値の絶対値を予測花蕾重で除した平均値)は9.1 %である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果はブロッコリー早生品種「おはよう」(サカタのタネ)を用いて、北関東平野部の標準的な作型で得られたものである。
  • 日々の生育量を算出するための日々の気温、日射量データは農研機構メッシュ農業気象データを利用している。
  • 本成果は農業データ連携基盤(WAGRI)の「NARO生育・収量予測ツール」の生育予測API<yieldpredict-broccoli>で生育モデルに基づいて、播種日や定植日以降の日別の個体重量や収穫時の重量などの予測を提供している。

具体的データ

図1 ブロッコリーの生育予測モデルの概略,図2 地上部乾物重と積算受光量の関係,図3 茎・花蕾乾物分配率と積算気温の関係,図4 ブロッコリーの花蕾重の実測値と予測値の関係

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(国際競争力強化技術開発プロジェクト)
  • 研究期間 : 2019~2021年度
  • 研究担当者 : 大石麻南登、髙橋徳、福田真知子、佐藤文生
  • 発表論文等 : Ohishi M. et al. (2023) Hort, J. 92
    doi:10.2503/hortj.QH-022