要約
連続した暗黒条件では明暗条件に比べてキク切り花の葉の黄変が促進する。その際、葉からのエチレン生成量の増加を伴わない。さらに、連続した暗黒条件でのエチレン処理は黄変の促進に影響を与えないことから、葉の黄変へのエチレンの寄与は低い。
- キーワード : 暗黒、エチレン、黄変、小ギク、葉
- 担当 : 野菜花き研究部門・露地生産システム研究領域・露地野菜花き生産管理システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
キクは日本で最も出荷本数が多い切り花品目である。キク切り花は高温期の夏場に流通過程で葉が黄変する品質低下が問題となる。キク切り花では品種間差があるものの、明暗条件でエチレン処理により葉の黄変が促進されることが知られている。一方、流通過程では暗黒下に置かれることから、葉の黄変の発生には暗黒条件も関与すると考えられる。そこで、連続した暗黒条件によるキク葉の黄変とエチレンの関係性について明らかにする。
成果の内容・特徴
- 夏秋小ギク「小鈴」切り花において、連続した暗黒条件では明暗条件(12時間日長、PPFD 10 μmol/m2/s)に比べて葉の黄変が進み(図1A)、葉色の色相角度が著しく減少する(図1B)。
- 葉からのエチレン生成量は連続した暗黒条件と明暗条件ともに測定開始時が最も多く、その後同じように漸減し、そのパターンに変化はない(図1C)。これは、暗黒条件での葉の黄変はエチレン生成の増加を伴わないことを示す。
- 各光条件に搬入後0、2日目にエチレン処理を行うと、明暗条件では葉の色相角度の低下はみられず、かつ無処理との差もみられないが、連続した暗黒条件ではエチレン処理、無処理ともに色相角度が著しく低下し、処理間の差はみられない(図2)。搬入後4、6日目の処理においても同様の結果となる。これは「小鈴」において、どちらの光条件でもエチレンによる明確な葉の黄変促進効果は認められないことを示す。
- これらのことから、連続した暗黒条件下では著しく葉の黄変が進むがエチレンの寄与は低い。
成果の活用面・留意点
- 保管中の切り花に光を当てるなど、流通過程での黄変の発生を防ぐ技術の開発に活用できる。
- 本実験は全長50 cm、茎下部から15 cmの葉を除去した夏秋小ギク「小鈴」切り花を抗菌剤(0.5 mL/LケーソンCGと50 mg/L硫酸アルミニウムを含む)に生けて行った結果である。
- 光以外の環境条件は23°C、相対湿度70 %である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(委託プロジェクト研究「収益力向上のための研究開発」のうち、「国産花きの国際競争力強化のための技術開発」)
- 研究期間 : 2016年度
- 研究担当者 : 湯本弘子、山中正仁(兵庫県農研セ)
- 発表論文等 : Shimizu-Yumoto H. and Yamanaka M. (2023) Sci. Hort. 309:111676
doi:10.1016/j.scienta.2022.111676