要約
トルコギキョウの発蕾から収穫までの発育速度は、その期間の日平均気温と直線関係がある。この関係から得られる発育係数と日平均気温をもとに、発蕾日を起点として収穫日を予測できる。日平均気温を制御して目標収穫日に有効積算温度を達成するシステムにより計画生産が可能である。
- キーワード : トルコギキョウ、発育速度、収穫日予測、日平均気温、計画生産システム
- 担当 : 野菜花き研究部門・施設生産システム研究領域・施設野菜花き生産管理システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
高級切り花として贈答や業務用途の多いトルコギキョウは開花時期が安定せず、気象要因や栽培管理によっては、春や秋のパーティーシーズン、年末年始といった高需要期を取りこぼし、生産者の収益の逸失と市場に対する信用を失う事例も多い。精度の高い出荷情報は、相対取引などの計画的な販売に有利であり、生産者の収益の安定と向上とともに、フラワーロスの削減や計画的な流通にも貢献することから、早期に収穫日を予測し、需要に合わせた収穫を実現する技術が求められている。そこで本研究では、トルコギキョウの発蕾から収穫までの温度反応の解析を基に収穫日を予測する技術と、その普及のための計画生産システムを開発する。
成果の内容・特徴
- トルコギキョウの発蕾から収穫までに要する日数は季節変動を示し(図1)、発蕾から収穫までの日数の逆数である発育速度と、この期間の日平均気温の間には直線関係が認められる(図2)。この関係を基に2つの発育係数、有効積算温度と基底温度が算出できる。
- トルコギキョウの収穫日は上記2つの発育係数と、発蕾から収穫までの日平均気温を用いることで、異なる地域や作型においても誤差5日以内の精度で算出できる(表1)。
- 上記の関係に基づいて開発した計画生産システム(商品名DM-AMTeC(アムテック))は、入力した目標収穫日に有効積算温度に達するよう、毎日の昼間平均気温から目標となる夜間平均気温を計算し、夜温をヒートポンプや暖房機で制御することで日平均気温を正確に制御できる(図3)。すなわち、発蕾日を起点として目標収穫日と発育係数をDM-AMTeCに入力し、温度管理を自動制御することで、目標日に対して誤差が7日以内の計画生産が期待できる。
- 日単位での需要期出荷への対応と市場への高精度の出荷情報の提供により、切り花単価の安定と向上が期待できる。
普及のための参考情報
- 普及対象 : トルコギキョウ生産者、普及指導機関
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国・40ha(全国の作付け面積の10%)
- その他 :
- 栽培ハウスの気温は通風筒(例:NIAES-09)を用いて正確に測定する。
- 切り花の花序については、主茎頂花を摘蕾し、1次側枝を2または3本に、1枝あたり2蕾になるよう、圃場で芽整理を行う。発蕾日は主茎頂花が蕾長5 mm程度で目視できた日、収穫日は全ての分枝が1輪開花した日とする。
- 発育係数は中大輪八重14品種について算出済みで、今後追加予定である。なお、発育係数を用いた収穫日予測は、発蕾-収穫期間の日平均気温が18°Cから30°Cを適用範囲とする。
- DM-AMTeCについては、株式会社ダブルエム
から購入可能である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(革新的技術開発・緊急展開事業:経営体プロジェクト)
- 研究期間 : 2018~2023年度
- 研究担当者 : 福田直子、牛尾亜由子、岩崎勇次郎(静岡県農林技研)、寺田吉徳(静岡県農林技研)、佐藤憲二郎(長野県野菜花き試)、宮本賢二(長野県野菜花き試)、都丈志((株)ダブルエム)、狩野敦((株)ダブルエム)、上條信太郎((株)フラワースピリット)、嶋津光鑑(岐阜大)
- 発表論文等 :