日持ちが優れる切り花用ダリア新品種「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」

要約

「エターニティピーチ」は花弁の縁が桃色で中心部が白色の複色、「エターニティシャイン」は全体が桃色であり、それぞれ6.3~9.6日、8.9~11.5日の日持ち日数を示す良日持ち性ダリア品種である。「エターニティシャイン」は高温下や長距離輸送後の日持ち性にも優れ、生産性が高い。

  • キーワード : ダリア、日持ち性、日持ち日数、エターニティシリーズ
  • 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・施設野菜花き育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

日持ち性は、切り花を購入する消費者にとって最大の関心事であり、花きの重要形質の一つである。ダリアは、豪華さ、豊富な花型、多彩な花色を持つことから人気の高い品目であるが、最大の欠点は日持ち性に劣る点であり、日持ち性の遺伝的な改良が強く望まれている。日持ち性とともに、生産性や、切り花輸出に向けた長距離輸送後の日持ち性などの形質も重要である。全国普及が進んでいる「エターニティトーチ」、「エターニティロマンス」、「エターニティルージュ」(以後エターニティシリーズ)にはない花色を持つ品種を育成することにより、エターニティシリーズのバリエーションを広げ、一体的に普及を進めるため、エターニティシリーズの追加品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 育種材料とした切り花用ダリア22品種間の交雑後代を第1世代、第1世代選抜系統間の交雑後代を第2世代、第2世代選抜系統間の交雑後代を第3世代として、第1世代から日持ち性による選抜とその選抜系統間での交雑を第3世代まで繰り返し行った。「エターニティピーチ」は第3世代229実生から選抜した系統、「エターニティシャイン」は既存品種と第2世代選抜系統を交雑した後代から選抜した系統であり、育成に要した期間はいずれも8年11か月である。
  • 「エターニティピーチ」(図1A)は、"桃色に中心が白色"の複色花色、花径約12cm、"フォーマルデコラ咲き"、「エターニティシャイン」(図1B)は、"桃色"、花径約13cm、"フォーマルデコラ咲き"である。両品種とも優れた日持ち性を示し、露心が発生しにくい。両品種の早晩性は"早生"であり、「エターニティシャイン」の収穫本数は、豊産性の対照品種「かまくら」の1.3~1.5倍と、生産性が高い(表1)。
  • 「エターニティピーチ」の日持ち日数は、23°C、相対湿度70%、12時間日長の条件で、蒸留水に生けた場合に8.0~8.7日、品質保持剤入り(GLA)に生けた場合に9.5~9.6日と、日持ち性並の対照品種「かまくら」の1.4~1.6倍である(表2)。
  • 「エターニティシャイン」の日持ち日数は、23°C、相対湿度70%、12時間日長の条件で、蒸留水に生けた場合に9.9~10.7日、品質保持剤入り(GLA)で11.2~11.4日と、「かまくら」の1.6~2.0倍である(表2)。夏期(7~8月)の高温条件のハウスで栽培した場合(生け水は抗菌剤入り)や、切り花を28°Cで評価した場合(生け水は品質保持剤入り(GLA))の日持ち日数も、それぞれ11.5日(「かまくら」の2.9倍)、8.9~10.2日(「かまくら」の1.5~2.0倍)であり、高温下の日持ち性にも優れる(表2)。
  • 「エターニティシャイン」は、長距離輸送後の日持ち性に優れる。宮崎県からつくば市に長距離輸送した後に、品質保持剤入り(GLA)に生けた場合の日持ち日数は、日持ち性良の対照品種「ミッチャン」の6.2日に対して、「エターニティシャイン」では15.2日であり、「ミッチャン」の約2.5倍日持ちする(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : ダリア生産者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国のダリア生産地で栽培可能である。先行3品種にこの2品種を追加することで、5品種をエターニティシリーズとして一体的に普及する。
  • その他 : 原種苗の提供は2024年3月の予定であり、商用苗販売は2024年夏以降、本格普及は2025年を想定している。

具体的データ

図1 「エターニティピーチ」(A)、「エターニティシャイン」(B)の花色および花型,図2 宮崎県の生産地で採花し、農研機構(茨城県つくば市)へ長距離輸送後10日目の切り花(左)対照品種「ミッチャン」(既存品種の中では日持ち性良とされている)、(右)「エターニティシャイン」,表1 「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」の早晩性と生産性,表2 「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」の日持ち日数(日)

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:収益力向上のための研究開発、持続的生産強化対策事業:ジャパンフラワー強化プロジェクト推進)
  • 研究期間 : 2014~2023年度
  • 研究担当者 : 小野崎隆、藤本卓生、東未来
  • 発表論文等 :
    • Onozaki T. and Fujimoto T. (2023) Hort. J. 92:308-322
    • 小野崎ら(2024)農研機構研究報告 17:53-69
    • 小野崎ら「エターニティピーチ」品種登録出願公表第36388号(2023年1月17日)
    • 小野崎ら「エターニティシャイン」品種登録出願公表第36389号(2022年10月17日)