強度の根こぶ病抵抗性と高い実用形質を有するキャベツ品種「YCRふゆいろ」

要約

キャベツ品種「YCRふゆいろ」は市販品種の中で最も高いレベルの根こぶ病抵抗性を有しており、根こぶ病被害の軽減に寄与する。球の肥大性は良好で、球形は平玉となり、青果用、加工・業務用ともに利用できる。

  • キーワード : キャベツ、根こぶ病抵抗性、青果用、加工・業務用
  • 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・露地野菜花き育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

根こぶ病はアブラナ科野菜全般に発生する難防除の土壌病害で、罹病個体は根部がこぶ状に肥大して減収または枯死にいたる。国内のキャベツ生産では根こぶ病防除のために年間約17億円の農薬を投入しているが、農薬や菌密度低下のための耕種的防除のみでは発病抑制が難しいため、抵抗性品種の利用は最も有効な根こぶ病対策の一つと考えられている。しかし、キャベツでは抵抗性に複数遺伝子が関与しているために育種が困難である。そこで、根こぶ病被害の軽減および化学農薬使用量削減のため、DNAマーカー選抜の利用により強い根こぶ病抵抗性および実用形質を有するキャベツ品種を育成・普及する。

成果の内容・特徴

  • 「YCRふゆいろ」は、DNAマーカー選抜を用いて3座の根こぶ病抵抗性QTLsを集積したキャベツF1品種であり、最も寄与率の高い1座をホモに、残りの2座をヘテロに有する。2019年12月12日に品種登録出願公表された。
  • 「YCRふゆいろ」は市販の根こぶ病抵抗性品種の中で最も高いレベルの根こぶ病抵抗性を有しており、幼苗接種検定による抵抗性程度は強度抵抗性品種「YCR理念」に比べ"同程度~やや強"、中程度「YCRこんごう」および「YCRげっこう」に比べ"強"である(図1)。
  • 「YCRふゆいろ」の結球重は「松波」や「YCR理念」よりも重く、肥大性が優れる(表1)。球形比は「松波」や「YCRこんごう」より小さく、球形は"平玉"であり、結球緊度が高いことから、青果用とともに加工・業務用としての適性が高い。球内部のチップバーン等の生理障害の発生は"極少"である。試験栽培圃場における結球重は加工・業務用に適した1.8~2.3kgであり、球の肥大性は良好である(表2、図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : キャベツ生産者、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 愛知県、熊本県を中心に2022年から普及し、2023年度における普及面積は約100haであり、今後、関東地域への普及を図り、300ha以上の普及面積を見込む。
  • 「YCRふゆいろ」は、夏まき冬どり作型に適している。春まき初夏どり作型では従来品種と同様、球内部のチップバーンの発生に留意する必要がある。
  • これまでの普及実績では「YCRふゆいろ」を激しく加害する菌株の存在は認められていないが、根こぶ病菌は多様であり本品種を加害する菌株が存在する可能性もあることから、耕種的防除(転炉スラグの施用、おとり植物の利用など)を含む総合防除を行うことが望ましい。
  • 「YCRふゆいろ」は、萎黄病に対する抵抗性(YR)と根こぶ病抵抗性(CR)を有する複合病害抵抗性(YCR)品種である。
  • 種子は(株)日本農林社より販売されている。

具体的データ

図1 幼苗接種検定における「YCRふゆいろ」の根こぶ病発病度,表1 「YCRふゆいろ」の収穫物特性,表2 試験栽培圃場における「YCRふゆいろ」の結球重,図2 「YCRふゆいろ」の栽培状況

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(技術でつなぐバリューチェーン構築のための研究開発のうち「強み」を生み出すための品種等の開発:ゲノム情報を活用した農産物の次世代生産基盤技術の開発、農林水産分野における気候変動対応のための研究開発:農林水産分野における気候変動の影響評価及び適応技術の開発)
  • 研究期間 : 2010~2023年度
  • 研究担当者 : 松元哲、小原隆由、畠山勝徳、柿崎智博、吹野伸子、板橋悦子、近藤友宏((株)日本農林社)、高下新二((株)日本農林社)、宮崎俊夫((株)日本農林社)、川崎光代
  • 発表論文等 : 松元ら「YCRふゆいろ」品種登録出願番号第34174号(2019年12月12日)