要約
チューリップ切り花の香りの発散は10°Cで抑制され、20°Cで促進される。20°Cは切り花を香らせるのに適しているが、香りが早く失われる。消費者が購入するまでにチューリップ切り花の香りの消耗を防ぐためには、輸送、保管、販売の段階で切り花を10°Cで管理することが有効である。
- キーワード : チューリップ、香り、切り花、温度管理
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・露地野菜花き育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
チューリップには芳香性の品種が存在する。しかし、20°Cの室温下におけるこれらの切り花の香る期間は3~5日程度であるため、消費者が購入する前に香りが弱くなっていることがある。チューリップの花の開閉は温度による制御が可能であることが知られており、切り花の香りの発散も温度により制御・調整できる可能性がある。そこで、本研究では、香りの種類が異なる複数のチューリップ品種を用いて、温度が切り花の香りに与える影響を明らかにし、消費者が購入後にチューリップ切り花の香りを楽しむために最適な温度管理方法を示す。
成果の内容・特徴
- チューリップの芳香性品種には、芳香族化合物を主体とした甘い香りの「クンフー」、モノテルペンを主体としたフルーティな香りの「サネ」、および脂肪酸誘導体やセスキテルペンを主体としたフローラルな香りの「バレリーナ」などがある(図1)。
- 「クンフー」、「サネ」、および「バレリーナ」の切り花を3種類の温度条件(13°C、18°C、23°C)で維持すると、23°Cでは花の開花や老化が早く、18°Cと比べて香りの発散量の増加が早くおこり、減少に転じるのも早い(図2)。一方、13°Cでは、花が十分に開花した後も香りの発散量がほとんど増加しない。13°Cのような低温下では、花の開花や老化に関係なく香りの発散が抑制される。
- 「クンフー」、「サネ」、および「バレリーナ」の切り花を条件1(20°C一定)と条件2(4日目まで10°C、その後20°Cに変更)で維持すると、条件2の方が切り花自体の日持ちが長い(図3上段)。また、条件1では、2日目から6または7日目頃まで香り、香る期間は約4~5日間である(図3下段)が、条件2では、20°Cに移した日の翌日の5日目から9日目頃まで香り、香る期間が条件1より3日間ほど遅くなる。このように、切り花の香り始める時期を温度管理によって制御・調整することで、香る期間を遅らせることができる。
成果の活用面・留意点
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2017~2022年度
- 研究担当者 : 岸本久太郎、渡邉祐輔(新潟農総研園研セ)、池川誠司(富山農林水総技セ園芸研)
- 発表論文等 :
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Kishimoto K. et al. (2023) Hort. J. 92:354-365
- Kishimoto K. and Watanabe Y. (2023) JARQ 57:217-224
- 岸本(2023)植調、57:7-12