要約
ブロッコリー大型花蕾生産技術は秋冬作産地、夏秋作産地で広く実施可能であり、全国平均単収の3倍以上の増収が期待できる。一斉収穫、混み玉コンテナ出荷と組み合わせることで、総労働時間が半減し、増収と省力化で労働生産性や1時間当たり所得が大幅に向上する。
- キーワード : ブロッコリー、フローレット、加工業務用野菜、周年安定供給、省力化
- 担当 : 野菜花き研究部門・露地生産システム研究領域・露地野菜花き生産管理システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
ブロッコリーの大型花蕾生産技術は、栽培期間を長くして一般的な青果用の収穫サイズよりも花蕾を大きくして収穫する生産方法である。青果用の生産方法より増収となることから、収穫サイズに厳密な規格を必要としない加工業務用の効率的な生産方法として関心が高まっている。本技術を全国的に普及させるためには、各産地での品種選定や大型花蕾生産技術の再現可能性を検証する必要がある。また労働生産性や経済性の評価も求められている。そこで本研究では、関東以西の7県のべ10作型で、秋冬作産地で合計25品種、夏秋作産地で合計23品種を用い、各地の適品種や再現可能性を解明するとともに、生産者圃場での実証栽培試験に基づく経済性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 7県のべ10作型のいずれでも全国の平均単収(花蕾収量約1000kg/10a、フローレット収量推定700kg/10a)の3倍以上(花蕾収量3000kg/10a以上、フローレット収量2100kg/10a以上)が達成可能である(表1)。
- 各作型で高収量を記録した品種は、過去に報告されていた「グランドーム」のほかに、秋冬作期では「クリア」や「こんばんは」、夏秋作期では「SK9-099」である(表1)。
- 青果用とは異なり収穫サイズに厳密な規格を必要としない加工業務用では、省力的な一斉収穫および大小混み玉でのコンテナ出荷が実現する(図1)。
- 大型花蕾生産技術と一斉収穫を組み合わせた実証栽培では、慣行の栽培方法と比較して、総労働時間が56%減少し、出荷量が19%増加する結果、労働時間当たりのブロッコリー生産量(労働生産性)が7.3kg/hから19.7kg/hへと169%増加し、1時間当たり所得が1,159円/hから1,689円/hへと46%増加する(表2)。加工業務用のため販売単価は低いが、大幅な省力化が可能なため、経営体として規模拡大による収益増加が図りやすい。
普及のための参考情報
- 普及対象 : ブロッコリー生産者、普及指導機関。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 実証産地を中心に全国の秋冬作産地、夏秋作産地で普及が期待される。JAあわじ島では2023年に2haに普及、今後も拡大予定。
- その他 :
- 栽培期間の延長によって花蕾の大型化が期待できるが、気象条件によっては、秋冬作産地では寒波による白化、夏秋作産地では高温による黄化などの生理障害発生リスクが増加するため、16~18cm程度で収穫するとより品質が安定する。
- 実証試験(表2)では、天候等の関係で早めの収穫となり、表1の結果から想定される収量が得られなかった。今後、適切な収穫時期を高精度に見極める収穫予測技術の開発が求められる。
- 表1の試験地のうち、兵庫県、香川県、熊本県の圃場は水田転換畑圃場であり、水田裏作や、水田転作でブロッコリーを栽培するのにも有効な技術である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2019~2022年度
- 研究担当者 : 髙橋徳、松永明子、大石麻南登、佐藤文生、佐々木英和、中野伸一(兵庫県淡路農技セ)、尾崎将太(熊本県農研セ)、小松和彦(長野県野花試)、柴本洋輔(長野県野花試)、保勇孝亘(長野県野花試)、中塚雄介(長野県野花試)、岡田咲紀(長野県野花試)、鶴田智也(JA全農耕種総合対策部)、阿部友美(JA全農耕種総合対策部)、羽生田冴莉(JA全農耕種総合対策部)
- 発表論文等 :
- Takahashi M. et al. (2025a) Hort. J. 94:313-322
- Takahashi M. et al. (2025b) Hort. J. 94:323-336