要約
メロン新品種「アールスアポロン」シリーズ4品種(夏系、春秋系、早春晩秋系、秋冬系のF1品種)は、果肉が"緑色"で、果皮に"ネットがある"アールス系メロンである。本品種は、退緑黄化病の病原ウイルス(CCYV)に感染しても罹病性品種より発病程度が"軽い"。
- キーワード : メロン、退緑黄化病、抵抗性、CCYV、タバココナジラミ
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・施設野菜花き育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
メロンは主要な果実的野菜の一つである。近年、メロン産地では、退緑黄化病が発生し大きな問題となっている。退緑黄化病はウリ類退緑黄化ウイルス(CCYV)を病原とするウイルス病で、タバココナジラミによって伝搬される。CCYVに感染すると、葉に退緑した小斑点を生じた後、葉全体が黄化し、果実重及び糖度が低下するため商品価値が著しく低下する。タバココナジラミは、体長約0.7mmの微小な害虫であるため、ウイルスを持った成虫がハウス内へ侵入するのを完全に制御することは困難である。また、有効な農薬が限られるタバココナジラミ系統が増えていることから、従来の方法では十分な防除が難しいのが現状である。そこで、退緑黄化病に対して抵抗性を有する品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「アールスアポロン」シリーズは、果肉が"緑色"で、果皮に"ネットがある"アールス系メロンである(図1)。
- 栽培適期は、「アールスアポロン(夏系)」では6~7月播種・9~10月収穫、「アールスアポロン(春秋系)」では7~8月播種・10~11月収穫、「アールスアポロン(早春晩秋系)」では8~9月播種・11~12月収穫、「アールスアポロン(秋冬系)」では9月播種・12~1月収穫となる。
- 4品種とも、退緑黄化病抵抗性を有する。退緑黄化病抵抗性検定では、罹病性品種より発病程度が"軽い"(図2、表1)。
- 退緑黄化病に対して完全な抵抗性はなく、タバココナジラミ自体には抵抗性がないため、本品種を栽培する際には、ハウスに目合い0.4mmの防虫ネットを張る、防除効果の高い農薬を適切な時期に処理することも重要である。
普及のための参考情報
- 普及対象 : メロン生産者、普及指導機関。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 退緑黄化病が発生している関東以西のメロン産地。2024年は約52万粒の種子を販売した(栽培面積は推計26ha、産出額は推計7.8億円)。2033年度に年間約280万粒の種子販売を想定している(栽培面積は140ha、産出額は43億円)。
- その他 : 2024年7月から種子販売を開始した(株式会社萩原農場生産研究所から販売)。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業、オープンイノベーション研究・実用化推進事業)
- 研究期間 : 2013~2023年度
- 研究担当者 : 川頭洋一、杉山充啓、下村晃一郎、上田重文、矢野亮一、大和陽一、渡辺慎一、中井勇介、吉留克彦、前田昭一、松尾征徳、弓部倫美、原田守(萩原農場)、山本達也(萩原農場)
- 発表論文等 : Kawazu Y. et al. (2024) Acta Hortic. 1404:961-966
doi:10.17660/ActaHortic.2024.1404.131