要約
「エターニティムーン」はダリアエターニティシリーズ初の白色品種であり、「エターニティサンセット」は観賞中に明赤色からアプリコット色に花色が変化する。それぞれ、対照品種「かまくら」の1.6~2.0倍、1.7~2.2倍の日持ち日数を示す良日持ち性ダリア品種である。
- キーワード : ダリア、日持ち性、日持ち日数、花色、エターニティシリーズ
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き品種育成研究領域・施設野菜花き育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
切り花の日持ち性は、花きの最も重要な育種目標の一つである。ダリアは、豪華さ、豊富な花型、多彩な花色を持つことから人気の高い品目であるが、最大の欠点は日持ち性に劣る点であり、日持ち性の遺伝的な改良が強く望まれている。これまでに日持ち性に優れる5品種(「エターニティトーチ」、「エターニティロマンス」、「エターニティルージュ」、「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」;以後エターニティシリーズ)を先行して育成済みである。しかし、花色は赤色~濃桃色系のみであり、バリエーションに乏しい。そこで、慶弔のセレモニーで利用可能な白色や、花色が変化するなど、これまでのエターニティシリーズにはない花色や特徴を持つ品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 育種材料とした切り花用ダリア22品種間の交雑後代を第1世代、第1世代選抜系統間の交雑後代を第2世代、第2世代選抜系統間の交雑後代を第3世代、第3世代選抜系統間の後代を第4世代として、日持ち性による選抜とその選抜系統間での交雑を第4世代まで繰り返し行う。「エターニティムーン」は第4世代233実生から選抜した系統、「エターニティサンセット」は第3世代229実生から選抜した系統である。
- 「エターニティムーン」(図1A)は、"クリーム白色"、花径約10~13cm、"フォーマルデコラ咲き"、「エターニティサンセット」(図1B)は、"明赤色"、花径約11~13cm、"フォーマルデコラ咲き"である。両品種とも優れた日持ち性を示す。「エターニティムーン」は夏秋期栽培では夏季の高温の影響により「かまくら」より18日開花が遅く、収穫本数が少ないが、冬春期栽培では「かまくら」より9日開花が早く、収穫本数は「かまくら」の1.4倍と、生産性が高い(表1)。「エターニティサンセット」は、咲き始めは"明赤色"であるが、数日後には内花弁が淡色化してグラデーションを生じ、"アプリコット色"に変化する(図2)など、花色の変化が楽しめる。
- 「エターニティムーン」の日持ち日数は、23°C、相対湿度70%、12時間日長の条件で、蒸留水に生けた場合に8.9~10.2日、品質保持剤入り(GLA)に生けた場合に10.1~10.5日と、日持ち性並の対照品種「かまくら」の1.6~2.0倍である(表2)。
- 「エターニティサンセット」の日持ち日数は、23°C、相対湿度70%、12時間日長の条件で、蒸留水に生けた場合に8.6~11.2日、品質保持剤入り(GLA)で11.0~11.9日と、「かまくら」の1.7~2.2倍である(表2)。夏期(7~8月)の高温条件のハウスで栽培した場合(生け水は抗菌剤入り)の日持ち日数は11.3日(「かまくら」の2.8倍)であり、高温下の日持ち性にも優れる(データ略)。
普及のための参考情報
- 普及対象 : ダリア生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国のダリア生産地で栽培可能であるが、「エターニティムーン」は夏季の高温の影響により開花が遅延するため、夏秋期栽培向けではなく冬春期栽培に適した品種である。先行5品種にこの2品種を追加することで、7品種をエターニティシリーズとして一体的に普及する。
- その他 : 商用苗販売は2025年春以降、本格普及は2026年を想定している。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(生産現場強化のための研究開発:収益力向上)、その他外部資金(令和6年度持続的生産強化対策事業のうちジャパンフラワー強化プロジェクト推進)
- 研究期間 : 2014~2024年度
- 研究担当者 : 小野崎隆、藤本卓生、東未来
- 発表論文等 :
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Onozaki T. and Fujimoto T. (2023) Hort. J. 92:308-322
- 小野崎ら(2024)農研機構研究報告、19:43-62
- 小野崎ら「エターニティムーン」品種登録出願公表第36948号(2023年10月30日)
- 小野崎ら「エターニティサンセット」品種登録出願公表第36949号(2023年10月30日)