群落光合成量および果実成長量の変動に基づくパプリカの短期的収量変化の高精度予測

要約

パプリカは不安定な着果により収量が大きく変動するため、生産現場の安定出荷や効率的な労務管理が妨げられている。栽培環境と生育データから、日々の群落光合成量および果実成長量に応じて果実分配量の変動を推定することで、収量の短期的変化が高精度で予測できる。

  • キーワード : パプリカ、生育・収量予測、フラッシュ、果実成長、群落光合成
  • 担当 : 野菜花き研究部門・施設生産システム研究領域・施設野菜花き生産管理システムグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

パプリカの長期栽培では日々の新鮮収量が数日から数週間で大きく増減する。この新鮮収量の短期的な変化はフラッシュと呼ばれ、生産現場の安定出荷や効率的な労務管理の妨げになっている。この新鮮収量の短期的変化を予測し、生産管理に活用できれば、パプリカの労働生産性を大幅に向上させることができるが、既存の生育・収量予測モデルでは新鮮収量の短期的変化を予測することができなかった。そこで、本研究では群落光合成量(以下、乾物生産量)と果実分配量の変動を推定するモデルを開発し、既存の生育・収量予測モデルに組み込むことで、パプリカ収量の短期的変化を予測する。

成果の内容・特徴

  • 日々の環境データ(日射量、CO2濃度)および植物の生育データ(葉面積指数)から求めた積算受光量と光利用効率を乗じることで地上部の乾物生産量を算出する(図1)。果実の日々の重量増加は、開花から収穫までの積算気温と果実重量の回帰式から、日々の乾物生産量に応じて求める。果実の着果状況は、定期的な着果調査により取得し、全果実の重量増加の積算値が果実分配量となる。開花からの積算気温を用いて、この積算気温が一定以上になった果実を収穫対象とし、収穫対象果実の重量の合計値が新鮮収量となる(図1)。
  • 栽培対象のパプリカ品種にて、光利用効率の推定に用いる係数(α、β)、吸光係数(k)、果実成長量の品種特性係数(Abc)、果実乾物率(DMC)を事前に取得することで、開発したモデルを用いた生育・収量予測を実施することができる(図1)。
  • 乾物生産量と、着果状況や果実成長による果実成長量は日々変動するが、果実成長量に比べて乾物生産量が上回っている。つまり、果実成長に必要な光合成産物は概ね足りていることから、収量の短期的変化は果実重ではなく、概ね着果数の多少に起因する(図2)。
  • 開発したモデルにより、収量の変動幅が異なるパプリカ4品種(小果、中果、大果品種を含む)において、日々の新鮮収量の短期的変化を高精度で予測することが可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、赤系品種「アルテガ」、「ナガノ」、「ネスビット」、「トリロッソ」を用いて得られた結果である。品種ごとの固有の係数を取得すれば、他品種でも生育・収量予測を行うことができる。
  • 一連の計算式に使用する係数群(光利用効率、吸光係数、果実成長量の品種特性係数、果実乾物率など)は、事前に取得した品種固有のものを用いる。これら係数の取得方法は、Hommaら(2023)に詳述されている。
  • 開発したモデルを活用すれば、環境制御(CO2施用や補光など)や摘果調整による収量変動のシミュレーションが可能である。
  • 開発したモデルを活用すれば、予測日から約2か月先までの高精度な収量予測が可能になることから、労務管理や出荷量の予測に役立てることができる。
  • 開発したモデルは、植物の生育に適切な環境下(例:気温18~28°C、排液率20%以上等)での栽培を前提としており、作物に不適な環境(例:極端な高低温や水分不足等)では予測精度が低下する可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2019~2023年度
  • 研究担当者 : 本間優、東出忠桐、安東赫、小田篤、礒﨑真英
  • 発表論文等 :
    • Higashide T. and Heuvelink E. (2009) J. Amer. Soc. Hort. Sci. 134:460-465
    • Homma M. et al. (2023) J. Amer. Soc. Hort. Sci. 148:292-303
    • 本間ら(2024)園学研、23:7-20