要約
DcFT1は、シロイヌナズナの抽苔、開花を促進する機能があり、カーネーションでは開花に先行して発現が高まる。DcFT1の発現上昇は、晩生品種より早生品種で早く、日の入り後の短時間冷房により開花を促進した場合にも早くなることから、開花誘導の判定に利用可能である。
- キーワード : カーネーション、FT、花成、開花、遺伝子組換え
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・育種技術開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
我が国の主要花きであるカーネーションの生産では、定植から開花までの到花日数が短い早生の形質が収量(1作で1株の苗から収穫できる本数)を決定する主要因であり、1本あたりの生産コスト低減、エネルギー消費、施肥量削減の観点からも重要である。カーネーションはモデル植物であるシロイヌナズナ等と同じ長日植物であるが、これまで分子レベルでの開花制御機構については明らかになっていない。そこで、遺伝子機能解析、発現解析から、カーネーションの開花制御に重要な遺伝子を明らかにし、開花の促進や早生品種育成につながる知見を得る。
成果の内容・特徴
- カーネーションゲノムデータベース(https://carnation.kazusa.or.jp/)にはフロリゲンをコードする遺伝子FLOWERING LOCUS T(FT)のアノテーションを持つ遺伝子が4つ存在し、Dca19666.1(DcFT1と命名)には、FT活性に重要と報告されているアミノ酸残基が保存されている(表1)。
- 遺伝子組換えによりDcFT1を過剰発現したシロイヌナズナは抽苔が早く(図1)、DcFT1はシロイヌナズナの開花を促進する。
- 早晩性の異なる品種間の発現解析の結果から、DcFT1は、開花に向けて上部展開葉での発現が上昇し、早生品種での発現上昇が早い(図2)。
- 夏秋期の切り花品質改善を図ることを目的とした日の入り後の短時間冷房(EOD-cooling)栽培では、開花が前進するが、この時DcFT1の発現上昇も前進する(図3)。
成果の活用面・留意点
- DcFT1の発現上昇を指標として、開花誘導の判定が可能になり、カーネーションの開花生理に関わる大学、公設研究機関等の研究者が活用できる知見である。
- カーネーションの開花調節機構の分子生物学的理解につながる重要な基礎的知見である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2014~2024年度
- 研究担当者 : 八木雅史、宇野雄一(神戸大)、岡本花弥(神戸大)、小西晴香(神戸大)、新宅佳那子(神戸大)、小山竜平(神戸大)、東浦優(兵庫県農技セ)、松野純子(愛知県)、白澤健太(かずさDNA研)、磯部祥子(かずさDNA研)、平川英樹(かずさDNA研)、山口博康、小野崎隆、棚瀨幸司
- 発表論文等 :
- Yagi M. et al. (2020) Sci. Hortic. 262:109053
- Okamoto K., Yagi M. et al (2024) Hort. J. 93:406-415