要約
アブラナ科野菜に含まれる18種類のグルコシノレートの一斉分析が可能となる分析方法である。本分析方法により、農業生物資源ジーンバンクで保有する4種のBrassica属遺伝資源ではグルコシノレート組成に明確な違いがあることが確認される。
- キーワード : アブラナ科野菜、グルコシノレート、機能性成分、遺伝資源、主成分分析
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・素材開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
グルコシノレート(GSL)はイオウ元素を含むグルコース配糖体であり、前駆体となるアミノ酸の種類によって、脂肪族系GSL、インドール系GSL、芳香族系GSLの3種類に大別される。アブラナ科野菜には側鎖の構造が異なる様々なGSLが含まれており、植物体内では二次代謝産物として虫害や病害から身を守るための防御成分として働く一方で、ヒトにとっては健康の維持・増進に貢献する機能性成分として注目されている。一般的にGSLの分析は液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行われるが、複数のGSLを同時に分析するためには、各GSLに由来するピークが別々に識別されて検出される必要がある。しかし既存の分析法は、特定の品目に含まれているGSLの測定に特化しているため、同時に分析できるGSLの数に限りがある。そこで、品目の適応性を広げるためにHPLCの分析条件の最適化を試みる。さらに最適化された分析法を用いて、農業生物資源ジーンバンクで保有するアブラナ科野菜の遺伝資源に含まれるGSL組成を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 開発した分析法は、既存の分析方法と比較してカラム温度とグラジエント条件の最適化によって、様々なアブラナ科野菜に適用可能としたGSL類の一斉分析法である。(表1)。表1に示す分析条件を用いることで、アブラナ科に属する5種(Brassica oleracea, Brassica rapa, Brassica napus, Brassica juncea, Raphanus sativus)の野菜の可食部に含まれる18種類のGSLを同時に分析することが可能である(表2)。
- 各GSLに由来するピークはシニグリン(SIN)とグルコラフェニン(GRE)を除いて、別々に識別されて検出される(図1)。ただし、GREはダイコンが属するR. sativusに特異的に含まれるGSLであり、R. sativusにはSINが含まれないため、実用上問題は生じない。
- Brassica属に属する4種(●:B. oleracea, ▲:B. rapa, 〇:B. napus, △:B. juncea)の遺伝資源の可食部のGSL組成に対して主成分分析を行い、スコアプロット(図2A)とローディングプロット(図2B)を作成することで、系統間のGSL組成の類似度と、第1主成分(PC1)、第2主成分(PC2)に対する各GSLの寄与を可視化することができる。今回使用したBrassica属4種は、得られたPC1とPC2によってスコアプロット上で分類されるため、これらのGSL組成には明確な違いがあることがわかる。
成果の活用面・留意点
- 今回測定したアブラナ科野菜の遺伝資源はいずれも農業生物資源ジーンバンクより取得可能である(https://www.gene.affrc.go.jp/index_ja.php)。これらの遺伝資源をもとに、機能性効果が報告されているグルコラファニンなど、特定のGSLを多く含む品種の開発が期待される。
- 各GSLの溶出時間は、HPLCの機種や配管の長さ、分離カラムのロットなどによって変動する。そのため、表1と同じ条件で分析をしても溶出時間は変動する可能性がある。また、分析時のカラム温度は20°Cであるため、室温が20°Cを超える場合は冷却機能を持つカラム恒温槽を使用する必要がある。カラム温度が20°Cより高い条件で分析すると、GBE、GST、4MGBS由来のピークが重複する事が確認されている。
- 本研究で得られたGSL含有量の測定値は、2021年から2022年にかけて農研機構野菜花き研究部門安濃野菜研究拠点で栽培された個体のデータである。GSL組成や個別のGSLの含有量は、栽培年次や栽培環境によって変動するため留意する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 山内雄太、安藤聡、石川祐子、上田浩史
- 発表論文等 : Yamanouchi Y. et al. (2023) Food. Sci. Technol. Res. 29:541-551