エチレン非依存的に老化するユリ花弁においてオートファジー様プロセスが誘導される

要約

エチレン非依存的に花弁が老化するユリでは、花弁の老化時に自己の細胞質構成成分の分解機構であるオートファジーに関連する遺伝子の発現量が上昇し、オートファジー様プロセスが誘導され、タンパク質が減少する。

  • キーワード : ユリ、エチレン非依存性花き、老化、オートファジー
  • 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・素材開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

花の日持ちは、花き市場において重要な形質である。エチレンが花の老化を誘導する花きでは、エチレン作用阻害剤であるSTS等により花の日持ちを延長することができる。一方、ユリ等の老化へのエチレンの関与が小さい花き(エチレン非依存性花き)では、有効な日持ち延長技術がない。オートファジーは、自己の細胞質構成成分(タンパク質等)の分解および栄養素の転流を担うシステムである。エチレン依存性花きのペチュニア等では、花弁の老化時にオートファジー様プロセスがエチレンにより誘導されることが知られている。そこで本研究では、ユリにおけるエチレン非依存的な花弁老化機構の解明を目的に、花弁の老化過程とオートファジーとの関連性について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • エチレン非依存的老化を示すユリ「シベリア」は、開花5日目に花弁の一部に水浸状を示す部分が生じ、開花6日目に花弁の一部が褐変化する(図1A)。その後、老化に伴い褐変化した部分の割合が増加し、開花8日目には完全に萎凋する。オートファジー関連遺伝子(LhATG8a-d)の発現量は、開花5日目から7日目にかけて顕著に多くなる(図1B)。同じオートファジー関連遺伝子であるLhATG8eに関しては、花弁の老化に伴って発現量が減少する。
  • モノダンシルカダベリン(MDC)は、オートファジーにおいて形成される球状のオートファゴソーム(細胞内成分の分解に関わる膜で囲まれた袋状構造)を含む酸性の構造体を染色する。MDCを用い、各老化段階の花弁の柔組織を染色すると、開花0日目から4日目の柔組織はほとんど染色されないが(図2、開花4日目のデータのみ掲載)、老化が進行した花弁の柔組織(開花5日目から7日目)では、染色される球状の構造体が多く観察される(開花6日目のデータのみ掲載)。
  • オートファジーはタンパク質分解を介した窒素化合物(栄養素)の生成に関与していることが知られている。ユリ花弁の老化過程におけるタンパク質量は、老化が進行した開花6日目と7日目で減少する(図3)。
  • これらの結果は、エチレン非依存性花きであるユリにおいても、花弁の老化時にオートファジー関連遺伝子の発現が誘導され、オートファゴソーム等の酸性小胞の形成に伴うタンパク質の分解といった一連のオートファジー様プロセスが誘導されることを示唆している。

成果の活用面・留意点

  • 本実験はユリの個々の花を花柄部分で切り取って、蒸留水の入ったガラス管に生けて行った結果である。測定部位は、花弁に相当する内花被の中心部である。
  • 本研究では、オートファジープロセスで特徴的に形成されるオートファゴソームを特異的に観察できていないことから、ここで観察される現象をオートファジー様とする。
  • 本研究は、エチレン非依存性花きの日持ち延長技術の開発に資する基礎的な知見となる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 森本隼人、渋谷健市
  • 発表論文等 : Morimoto H. and Shibuya K. (2024) Hort. J. 94:81-91 doi.org/10.2503/hortj.SZD-006