バラの個性的な香りの原因成分

要約

バラの香りには、カンキツに脂肪を加えたようなにおい(フォエティダ臭)や古い木製のタンスのようなにおい(古ダンス臭)など、個性的な香りがある。その原因成分は、フォエティダ臭は2,4-デカジエナールと2,4-デカジエノール、古ダンス臭は2,4,6-デカトリエン酸メチルである。

  • キーワード : バラ、香気成分、脂肪酸誘導体
  • 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・素材開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

現代バラの黄色品種の誕生に貢献した野生種であるRosa foetida(ロサ・フォエティダ)とその枝変わりの「オーストリアン・カッパー」、「ペルシャン・イエロー」は、他のバラにはないカンキツに脂肪を加えたような独特な香り(フォエティダ臭)を持つ。ノイバラを祖先とする初期のポリアンタ系統の品種である「アンヌ=マリー・ドゥ・モンラヴェル」、「ミニョネット」、「パキュレット」は、古くなった木製のタンスのような変わった香り(古ダンス臭)を持つ。これらの野生種・品種の香気成分の解析により、フォエティダ臭、古ダンス臭を生じさせる原因成分を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • R. foetidaとその枝変わり品種の主要香気成分は、R. foetidaは芳香族化合物(2-フェニルエタノール、酢酸フェニルエチル)、「オーストリアン・カッパー」はモノテルペン類(酢酸ゲラニル)、「ペルシャン・イエロー」はセスキテルペン類(カリオフィレン)であり、木のような香りのカリオフィレンを除き、甘い香りの成分である。加えて、脂肪酸誘導体の2,4-デカジエナール(2,4-DA)、2,4-デカジエノール(2,4-DO)、シス-ジャスモンが含まれている(図1)。
  • 初期のポリアンタ系統品種の主要香気成分は、「アンヌ=マリー・ドゥ・モンラヴェル」はモノテルペン類(酢酸ゲラニル)と芳香族化合物(オイゲノール)、「ミニョネット」はモノテルペン類(ゲラニオール)と芳香族化合物(オイゲノール、2-フェニルエタノール)、「パキュレット」はモノテルペン類(酢酸ゲラニル)、芳香族化合物(2-フェニルエタノール)であり、甘い香りの成分である。加えて、脂肪酸誘導体の2,4,6-デカトリエン酸メチル(2,4,6-DT)が含まれている(図2)。
  • ガスクロマトグラフにより分離された成分および、各主要香気成分と脂肪酸誘導体の混合物のにおいの官能評価により確認したところ、バラのフォエティダ臭の原因成分は脂肪臭を持つ2,4-DAと2,4-DO、古ダンス臭の原因成分は2,4,6-DTである。
  • R. foetidaとその枝変わり品種はいずれも同程度の強さのフォエティダ臭、「アンヌ=マリー・ドゥ・モンラヴェル」は強い古ダンス臭、「ミニョネット」は弱い古ダンス臭、「パキュレット」はごく弱い古ダンス臭が感じられる。このことから、2,4-DAと2,4-DOは低い含有量でフォエティダ臭を生じさせるが、2,4,6-DTは含有量が高くなるとより強い古ダンス臭を生じさせると推測される(図1、2)。

成果の活用面・留意点

  • 2,4-DA、2,4-DO、シス-ジャスモン、2,4,6-DTは、バラ属から初めて同定された香気成分である。
  • R. foetidaおよび「ミニョネット」は、芳香性品種を含め現代バラに多くの子孫品種を持つが、フォエティダ臭、古ダンス臭を持つ品種は少ない。ごく微量の異臭成分は芳香に寄与することがあり、2,4-DA、2,4-DO、2,4,6-DTも芳香に関わっている可能性がある。それらの成分を芳香性育種に利用するためには、バラ属での分布と遺伝様式を調べる必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2021~2023年度
  • 研究担当者 : 大久保直美、御巫由紀(千葉県立中央博物館)
  • 発表論文等 :
    • Oyama-Okubo N. and Mikanagi Y. (2023) Hort. J. 92:189-196
    • Oyama-Okubo N. and Mikanagi Y. (2024) Hort. J. 92:185-193
    • Oyama-Okubo N. and Mikanagi Y. (2024) Acta Hortic. 1404:175-880