要約
タマネギの球重は栽培環境の影響で変動しやすく、表現型のみでは大玉になる能力の高い個体を精度高く選抜することが困難である。本技術は、球重に関連する染色体上の特定領域内のDNA多型を指標とし、大玉になる能力が高い個体を精度高く選抜することにより、品種育成を効率化する。
- キーワード : タマネギ、球重、DNAマーカー、品種育成
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・育種技術開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
タマネギにおいて球重は収量や取引価格に直結するため、球重が安定して大きくなる特性は品種に必須である。球重は圃場ムラなどの栽培環境の影響で変動しやすいため、品種育成での選抜工程において、表現型からは、大玉になる能力が高く、かつその特性を後代に引き継ぐことができる個体(遺伝的能力が高い個体)を判別し、選抜することは困難である。品種育成の効率化のためには、遺伝的能力が高い個体を精度高く選抜可能な技術が必要である。本研究では、球重と密接に関連する染色体上の領域を明らかにし、その領域内のDNA配列の違いから遺伝的能力の高い個体を選抜する技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 本技術では、第8染色体上の球重と密接に関連する領域(球重領域)内に設計したDNAマーカーを使用する。DNAマーカーは3つあるが、マーカー間の距離は短いため、3つのマーカーは強連鎖する(図1)。
- 本技術のDNAマーカーは、DNA配列の挿入/欠損による違いを検出する(図2)。3つのマーカーのいずれでも球重領域の遺伝子型を判別できるが、3つのマーカーを1セットとして解析することで、より精度高く球重領域の遺伝子型を判別できる。3つのマーカーのプライマーセットを混合してPCRを行い、PCR産物をアガロースゲルまたはキャピラリーシーケンサーを用いた電気泳動により解析する(図2)。3つのマーカーの解析結果から、各個体の球重領域の遺伝子型を判別する。
- 球重領域の遺伝子型がAA型、AB型の個体は大玉になる(図3)。球重領域の遺伝子型から各個体はAA型、AB型、BB型に分類されるが、AA型とAB型の球重はBB 型に対して有意に大きい(図3)。一方で、AA型とAB型の球重には差がない(図3)。
- DNAマーカーの利用により、遺伝的能力の高いAA型の個体を精度高く選抜できる。AA型、AB型の球重には差がないため、従来の表現型選抜ではAB型の個体が選ばれる可能性があるが、AB型の後代ではBB型の小玉個体が発生する。DNAマーカーの利用により、後代の球重が安定して大玉になるAA型の個体を精度高く選抜できるため、本技術は品種育成の効率化に有用である。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 民間種苗会社、公設試、遺伝子検査業務実施事業者。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 民間種苗会社等の3社以上での利用。
- その他 : 本技術のDNAマーカー(特許)を利用する際には、農研機構との実施契約が必要である。または、特許許諾機関である公益財団法人かずさ DNA研究所に遺伝子型検査を依頼することも可能である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(スマート農業技術開発実証プロジェクト)、SIPII
- 研究期間 : 2022~2025年度
- 研究担当者 : 関根大輔、奥聡史、山内歌子、日浦聡子、塚﨑光
- 発表論文等 :
- Sekine D. et al. (2025) Molecular Breeding.45:86 doi:https://doi.org/10.1007/s11032-025-01614-9
- 関根ら「タマネギ種植物における球重の程度を判定する方法、大玉性のタマネギ種植物を製造する製造方法、タマネギ種植物における球重に関する分子マーカー、及び大玉性のタマネギ種植物を判定するための判定キット」特開2024-19017(2023年7月7日)