要約
植物群落が受ける光の量は葉面積や気象条件により変動し、日々の物質生産量に影響を与える。イチゴ植物群落上に設置したカメラより得られる深度情報に基づく日々の受光割合と日射データを乗じて群落受光量を求めることにより、日々の物質生産量を高精度で推定することができる。
- キーワード : 乾物生産量、葉面積、吸光係数、収量構成要素、イチゴ
- 担当 : 野菜花き研究部門・施設生産システム研究領域・施設野菜花き生産管理システムグループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
高精度な物質生産量(乾物生産量)の予測は、生育・収量の予測精度向上に寄与するため、労務管理や生産管理の効率化に資する。日々の乾物生産量は、植物群落が受けた日々の光の量(群落受光量)と、光合成により受けた光を乾物に変換する効率(光利用効率)を乗じることにより求められる。群落受光量の推定には、従来法である吸光係数と葉面積指数を用いて算出する方法と、カメラを用いて算出する方法のいずれかが用いられるが、葉面積の経時的な調査には多大な労力を要する。また、両手法から得られた群落受光量には乖離がある。そのため本研究では、カメラを用いた葉面積データの自動取得による省力化の実現ならびに、推定手法により異なる群落受光量の乖離を補正する技術を開発するため、画像データを基に群落受光量の推定を可能とするシステムを作成するとともに、両手法から得られた群落受光量の乖離を補正する技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 植物群落上に設置した深度カメラから得られる画像データを用いて日々の受光割合(0~100%)を算出する。日々の受光割合は、温室内に入射した日々の日射量(MJ/m2)のうち、植物が受けた日射量の割合(%)を意味する。日々の受光割合に日射量を乗じることで、日々の群落受光量を算出するシステムである(図1)(農研機構 職務発明プログラム、F-11およびF-30)。
- 吸光係数と葉面積指数を用いて算出した群落受光量よりもカメラより求めた群落受光量の方が小さい(図2)。そのため、カメラから得られた画像データより求めた群落受光量に光量を補正する係数(α)を乗じることで群落受光量が互換性を持つ(図1)。なお、本研究で取得したαは、「紅ほっぺ」の場合は1.53(図2)である。
- 補正した群落受光量と光利用効率を乗じることで、日々の乾物生産量を精度良く予測することができる(図3)。
- 事前に取得した作物・品種ごとに異なる光量の補正係数(α)と前述のシステムを用いることで、互換性を持つ群落受光量を簡易に推定することができる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、イチゴ品種「紅ほっぺ」を用いて得られた結果である。草丈が小さくカメラの設置が容易であるイチゴを対象とした結果ではあるが、トマトやキュウリといった他の果菜類にも適用が可能である。
- 光量の補正係数(α)は作物・品種に加え、栽培条件(株間、畝間、仕立て方法、等)により異なる可能性がある。
- 植物群落が生産する日々の乾物生産量を求めるにあたり、総乾物生産量を栽培期間全体で積算した群落受光量で割ることにより、品種ごとに異なる光利用効率を事前に取得する必要がある。
- 深度情報を取得可能なカメラであれば、機種を問わず群落受光量の推定が可能である。ただし、使用するカメラの性能(画素数、画素サイズ、焦点距離)により異なる撮影距離とピクセル面積間の換算係数を事前に取得する必要がある(図4)。
- 撮影距離とピクセル面積間の換算係数の使用方法は、職務発明プログラム(F-11およびF-30)の利用手順書に記載されている。職務発明プログラムの利用や手順書の閲覧に必要な契約手続きは、以下のURL(https://www.naro.go.jp/inquiry/program.html)から確認することができる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
- 研究期間 : 2018~2025年
- 研究担当者 : 本間優、礒﨑真英、小田篤
- 発表論文等 :
- 篠原ら(2021)職務作成プログラム「距離画像による受光葉面積解析プログラム」、機構-F11
- 本間ら(2023)職務作成プログラム「距離画像による受光葉面積自動解析プログラム」、機構-F30
- Homma M. et al. (2025) Eng. Agric. Env. Food. 18:230-239