要約
トマトの振動授粉に最適な加振周波数には品種間差があり、大玉・中玉トマトは15~50Hz、ミニトマトは50Hzで花粉が飛散しやすい。高速度カメラと振動装置を用いると花の固有振動数を測定でき、品種ごとに加振周波数を最適化できる。
- キーワード : 振動授粉、固有振動数、加速度、花粉の飛散しやすさ、品種間差、トマト
- 担当 : 野菜花き研究部門・野菜花き育種基盤研究領域・素材開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
トマトの施設栽培では、果実が着果するために受粉が必要であるが、送粉昆虫の高温による活動低下や外来種のマルハナバチの使用制限、ホルモン処理による空洞果発生などの課題がある。トマトの花は、ブロワーによる送風やバイブレーターによる振動によって花粉の飛散を促進させると着果率が高くなることがわかっており、近年ではドローンや音響装置を活用した革新的な人工授粉技術が開発されている。振動授粉の効率化には花の振動特性の解明が必要であるが、一部のミニトマト品種では花の固有振動数(自由に振動させたときに振幅が最大となる周波数)が明らかになっているものの、大玉・中玉トマトや主要なミニトマト品種については不明である。そこで、国内で市販されているトマト10品種を用いて、効率的な振動授粉に関する花の振動特性の違いを明らかにする。
成果の内容・特徴
- モーダル加振機(振動挙動の実験に使用される、物体を直接加振する装置)を用いて花を加振する場合、花粉の飛散しやすさ(花粉を飛散させるのに最低限必要な加速度、つまり力の大きさ)は品種や加振周波数によって異なり、大玉・中玉トマトでは15~50Hz、ミニトマトでは50Hzで100Hzよりも花粉が飛散しやすい(表1)。品種間で比較すると「鈴玉」は花粉が飛散しやすい。
- モーダル加振機を用いて大玉トマト「桃太郎ホープ」の花を加振する場合、花粉が飛散しやすいタイミングは開花1日前から開花4日後までである(図1)。
- 花ごとの花粉の量と飛散しやすさの間に相関はない。
- 花ごとの固有振動数は、非接触で物体を振動させることが可能な装置と高速度カメラを用いて求めることができる(図2)。これにより、品種ごとに加振周波数を最適化できる。
成果の活用面・留意点
- 固有振動数は物体の材質や大きさによって決まるため、加振方法(モーダル加振機や超音波集束装置などの装置)によらず、一定である。本研究では、固有振動数の計測のため、非接触で物体を振動させることが可能な超音波集束装置(90個の超音波スピーカーで構成され、25~50cm離れた1点を5~200Hzで加振する装置であり、イチゴの人工授粉用途で市販されている)を用いている。
- 本成果は、接触型・非接触型を問わず様々な振動授粉装置を用いたトマトの花の人工授粉に利用できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(オープンイノベーション研究・実用化推進事業)
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 浦入千宗、高梨琢磨(福島大)、小池卓二(電気通信大)
- 発表論文等 : Urairi C. et al. (2026) Environ. Control. Biol. 64:41-49