要約
「クワトロ-TK5」は根雪期間80日程度までの地域で栽培が可能なイタリアンライグラス四倍体早生品種である。「ワセアオバ」では雪腐病が問題となる地域において8%以上多収である。
- キーワード : イタリアンライグラス、二毛作、早生、雪腐病、耐雪性
- 担当 : 東北農業研究センター・緩傾斜畑作研究領域・生産力増強グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
イタリアンライグラスは雪腐病に弱いため、関東以西で行われているトウモロコシ等の夏作を組み合わせた二毛作体系による飼料生産を、積雪地域で行っている農家は少ない。既存の耐雪性早生品種「ワセアオバ」は根雪期間が60日を超えると減収するため、東北・北陸の積雪地域では耐雪性が充分ではない。「ナガハヒカリ」など中生品種には極めて耐雪性の高い品種もあるが、中生であるため、夏季の短い東北地域では夏作を組み合わせることが難しい。そこで、夏作との組み合わせが可能となる早生で耐雪性の優れる品種が必要である。
成果の内容・特徴
- イタリアンライグラス「クワトロ-TK5」は、四倍体早生系統「東北2号」から乾物率や耐雪性で選抜した品種である。出穂始日は「ワセアオバ」より2日早いが、出穂期は同程度であり、早生である(表1)。
- 「ワセアオバ」よりも耐雪性に優れ、雪腐褐色小粒菌核病菌(Typhula incarnata)による雪腐病が問題となる根雪期間80日までの積雪地においては、8%以上多収である(表1、図1、図2)。100日以上の積雪地では低収となり、栽培には向かない。
- 少雪地においては、「ワセアオバ」と同程度の収量である(表1、図1)。
- 出穂期の乾物率は「ワセアオバ」よりやや低い(表1)。
- 「クワトロ-TK5」の採種量は「ワセアオバ」と同程度であり、採種量に問題はない(表1)。
- 倒伏程度、推定TDN含量、冠さび病抵抗性(接種検定)、蛍光反応個体割合は「ワセアオバ」と同程度である(表1)。
- 各試験地における「クワトロ-TK5」の耕種スケジュールを表2に示す。1番草収穫後にトウモロコシが作付けできる。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 酪農や肉用牛の農家・法人、コントラクター等の飼料生産組織。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 根雪期間80日程度までの地域を中心に1,000ha。
- その他 : 2023年より民間種苗会社から種子が販売される。
- 栽培上の留意点として、「クワトロ-TK5」の千粒重は二倍体品種より大きい(表1)ため、播種量は3~4kg/10aとする。収量を確保するためには適正な施肥が必要(窒素成分で基肥8kg/10a、早春の追肥5kg/10a程度)である。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発)
- 研究期間 : 2005~2019年度
- 研究担当者 : 久保田明人、上山泰史、藤森雅博、米丸淳一、秋山征夫
- 発表論文等 :
- 久保田ら「クワトロ-TK5」品種登録第27979号(2020年6月15日)
- 久保田ら(2017)農研機構研究報告 東北農業研究センター、119:17-27
- 久保田ら(2021)日本草地学会誌、67:17-20