玄米中ヒ素、カドミウム濃度に最も影響する水管理の期間は出穂から2週間である

要約

玄米中ヒ素、カドミウム濃度に対し、およそ出穂2週前から出穂3週後にわたり水管理の効果が認められ、そのうち最も影響するのは出穂から2週間である。本情報の活用により、生産者の負担となっている玄米中ヒ素、カドミウム濃度低減のための水管理の効率化が期待される。

  • キーワード : ヒ素、カドミウム、水稲、水管理、ポット栽培試験
  • 担当 : 東北農業研究センター・水田作研究領域・水田輪作グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

人体に有害なヒ素(As)、カドミウム(Cd)の玄米中濃度は、出穂前後3週間の水管理が影響することが知られており、例えばAsの低減にはその期間内に複数回の3湛4落(3日湛水後4日落水)等の水管理が有効であることが示されている。生産者にとって水管理は負担になるため、玄米中As、Cd濃度低減のための水管理は効率的であることが望ましい。そのためには、より短期間の水管理の影響を把握する必要があるが、出穂前後3週間、すなわち合計6週間の中での影響は詳細に評価されていない。そこで、本研究では、出穂前後3週間にわたり1週間単位の水管理を要因として「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「タカナリ」の3品種のポット栽培試験を行い、玄米中As、Cd濃度に対する水管理の影響を1週間単位で評価する。

成果の内容・特徴

  • 「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「タカナリ」の玄米中As濃度に対する水管理の影響は、湛水で増加、落水で減少し、水管理の効果が認められるのはおよそ出穂2週前から出穂3週後、その中で寄与率が最も高い出穂後1~2週間の水管理が最も影響する(図1)。
  • 玄米中Cd濃度に対する水管理の影響は、湛水で減少、落水で増加し、水管理の効果が認められるのはおよそ出穂2週前から出穂3週後、その中で寄与率が最も高い出穂後1週間の水管理が最も影響する(図2)。
  • 玄米中AsとCd濃度に対し、インディカの「タカナリ」は出穂から2週間に水管理の寄与率が集中するのに対し、ジャポニカの「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」は出穂を含む週を中心に寄与率がばらつき、品種により水管理による影響の傾向が異なる。

成果の活用面・留意点

  • 週単位の水管理を因子にしたL12直交表に基づき実施した結果である。
  • 水管理の影響が高い時期に、玄米中As濃度のみ低減する場合は3湛4落等の落水、Cd濃度のみ低減する場合は湛水、AsとCd濃度の同時低減の場合は他の対策と組み合わせて実施することにより効率的な低減が期待できる。
  • 水管理の実施について、落水により玄米中As濃度は減少するのに対しCd濃度は上昇、湛水ではその逆となるトレードオフの関係にあることに注意する必要がある。
  • 出穂から登熟期の水管理は玄米品質に影響するため、玄米中As濃度を低減する場合に落水を弱めにする等注意する必要がある。
  • 本成果はポット栽培試験で検討されているため、現地水田では傾向が異なる可能性がある。

具体的データ

図1 1週間単位の水管理が玄米中As濃度に及ぼす影響,図2 1週間単位の水管理が玄米中Cd濃度に及ぼす影響

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2016~2017年度
  • 研究担当者 : 戸上和樹、三浦憲蔵(日本土壌協会)
  • 発表論文等 : Togami K. and Miura K. (2022) Soil Sci. Plant Nutr. 68:574-582