除草剤処理同日播種法の更新翌年の雑草防除効果は寒地型イネ科牧草種によって異なる

要約

草地更新における除草剤処理同日播種法の翌年の雑草防除効果は、寒地型イネ科牧草種によって異なり、その効果は初期生育の遅い草種で大きい。除草剤処理同日播種法は、東北地域における主要寒地型イネ科牧草の更新翌年の雑草量を抑え、特にエゾノギシギシの抑制効果が大きい。

  • キーワード : 寒地型イネ科牧草、雑草、除草剤処理同日播種法、草地更新
  • 担当 : 東北農業研究センター・緩傾斜畑作研究領域・生産力増強グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

人工草地で牧草が更新後に早く減少する事例が多く見られており、その大きな原因は大量の埋土種子由来の雑草が増加するためと考えられる。
除草剤処理同日播種法は、慣行の前植生の防除に加えて、播種直前にも非選択性除草剤を処理することにより埋土種子由来の実生も防除することにより、牧草の初期生育を助け、その後の雑草の発生を抑制する方法である(表1)。そこで、本研究では、更新時の雑草防除を目的として、東北地域の主要な放牧向け寒地型牧草5種(ペレニアルライグラス「夏ごしペレ」、オーチャードグラス「まきばたろう」、トールフェスク「Kyushu15」、ケンタッキーブルーグラス「ラトー」、メドウフェスク「まきばさかえ」)を対象とし、慣行法と除草剤処理同日播種法の2種類の方法で更新し、翌年の牧草収量と雑草量に及ぼす播種牧草種の影響を多回刈り条件下で検討する。

成果の内容・特徴

  • 草地更新翌年における播種牧草の年間収量の草種間差は、両更新方法で同様であり、ペレニアルライグラスで高く、メドウフェスクで低い(図1)。
  • 慣行法における年間合計の雑草量は、初期生育の早いペレニアルライグラスで低く、初期生育の遅い草種で高くなる(図2)。
  • 除草剤処理同日播種法の雑草防除効果は、牧草種によって異なり、初期生育の遅いオーチャードグラス、トールフェスク、ケンタッキーブルーグラス、メドウフェスクで大きい(図2)。
  • 除草剤処理同日播種法は、東北地域における主要寒地型イネ科牧草の更新翌年における年間合計の雑草量を抑え、特にエゾノギシギシの抑制効果が大きい(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本試験の雑草上位3種のエゾノギシギシ、ヒメムカシヨモギおよびメヒシバは全国の草地でも主要雑草であり、本成果は東北地域に限らず、同様な荒廃草地で寒地型牧草を更新する時に、除草剤処理同日播種法の導入に際しての知見として活用できる。
  • 除草剤処理同日播種法によって、更新翌年の雑草を抑えることにより、どのような利用方法でもその後の雑草の増加速度は遅くなる。しかし、本試験で得られた雑草防除効果の草種間差は、放牧を想定した多回刈り条件(年8回)の更新翌年の結果のため、利用2年目以降や年3回刈りの採草地では異なる可能性がある。

具体的データ

表1 草地更新方法,図1 更新翌年の慣行法と除草剤処理同日播種法における播種牧草の年間収量,図2 更新翌年の慣行法と除草剤処理同日播種法における年間合計の雑草量

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト) : AIやICTを活用した周年親子放牧による収益性の高い子牛生産技術の開発)
  • 研究期間 : 2016~2017、2020~2022年度
  • 研究担当者 : 東山雅一
  • 発表論文等 : 東山雅一(2022)日草誌、68:85-88