水田転換畑での子実トウモロコシ栽培において目標収量を得るために必要な栽培条件

要約

水田転換畑での子実トウモロコシ栽培において全刈収量800kg/10aを得るには、排水良好な圃場で栽培し、排水対策行うと同時に粒数を確保するため苗立ち率と砕土率の確保が必要である。また、栽植密度の確保には播種機で播種密度の設定を目標栽植密度より約5%高くする必要がある。

  • キーワード : 子実トウモロコシ、水田転換畑、真空式播種機、全刈収量800kg/10a、栽植密度
  • 担当 : 東北農業研究センター・水田輪作研究領域・ICT活用技術グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

米需要の低下による水稲作付面積の減少に伴う水田の高度利用や、大豆等転作畑作物の連作障害を回避するための新たな土地利用型作物に対する要望の高まり、国産濃厚飼料の増産などを背景に水田転換畑での子実トウモロコシ栽培が拡大している。しかし、東北地域の生産現場における子実トウモロコシの収量と砕土率や苗立ち条件、収量関連形質の関係は明らかにされていない。また、東北地域で多く栽培される子実トウモロコシ品種(相対熟度106~115日程度)の目標栽植密度は約7000本/10aとされているが、播種機の設定に関する知見は限られている。
そこで、岩手県中央部の水田転換畑での現地実証試験で栽培した子実トウモロコシについて、収量と砕土率や苗立ち条件、収量関連形質の関係を明らかにし、東北地域の子実トウモロコシ生産現場で生産者の目標収量とされているコンバイン収量(以下、全刈収量)800kg/10aを得るために必要な坪刈収量900g/m2を得るために必要な栽培条件を明らかにする。また、目標栽植密度7000本/10aを得るための播種機の設定を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 全刈収量800kg/10a(水分13%換算)は2021年の排水良好圃場でのみ得られ、排水不良圃場で800kg/10aは得られない。排水不良圃場の全刈収量の平均値は排水良好圃場の平均値と比較して3カ年で32~54%少ない傾向である(図1a、表1)。
  • 排水良好圃場では全刈収量800kg/10aを得るために①~③(坪刈収量と全刈収量の差異24%のうち、①既報(篠遠ら2024)からアワノメイガによる減収約7%、②既報(金井ら2020)からコンバインによる損失約0.5~1%、③額縁明渠の施工による圃場面積の減少約4%の合計で約12%が説明できると考えられる)の影響を考慮すると、坪刈収量900g/m2を目標とすると全刈収量800kg/10aが期待される。排水良好圃場における坪刈収量は、雌穂長と100粒重にはそれぞれ関係が認められないが、粒数と密接な関係が認められる(図2)。坪刈収量900g/m2に必要な粒数は3161粒/m2である(図2b)。生産現場における3161粒/m2とは、目標栽植密度である7000本/10aで栽培し、1株1つの雌穂が着生したとすると、1穂あたり約450粒の子実を確保する必要がある。約450粒/穂の粒数は、3カ年の排水良好圃場の100粒重の平均値28.4gから計算すると、1穂当たり水分13%換算で約130gの子実重を得る必要がある。
  • 坪刈収量900g/m2と粒数3161粒/m2に必要な苗立ち率はそれぞれ91%であり、苗立ち率91%に必要な砕土率は69%である(図3)。
  • 真空式播種機での設定播種密度に対して、播種量から計算した播種密度は3カ年で6~10%、苗立ち後の栽植密度は3カ年で6~17%少なく、栽植密度7000本/10aに満たない。密植による耐倒伏性の低下を考慮し、目標栽植密度より5%程度高い播種量の設定とする(図1b、表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、岩手県中央部に位置する紫波町の農家圃場での現地実証試験の結果であり、下層台地多湿黒ボク土もしくは細粒質普通疑似グライ土で得られた。
  • 水田転換畑での子実トウモロコシ栽培は圃場の排水性を確保する必要があり、暗渠が機能し、額縁明渠やサブソイラを施工でき、周囲の水稲圃場からの漏水がない圃場が望ましい。
  • 本成果は、アワノメイガ対策として無人航空機による殺虫剤散布の適用が拡大される前の成果であり、殺虫剤は散布していない。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2020~2022年度
  • 研究担当者 : 篠遠善哉、嶝野英子
  • 発表論文等 :
    • 篠遠、金井(2022)日草誌、68:93-96
    • 篠遠、嶝野(2025)日作紀、94:252-262