緩傾斜合筆圃場の窪地近くに暗渠が施工されているとダイズ初期生育が大きく改善する

要約

合筆を行った緩傾斜地の水田転換畑においては、周囲より低い窪地部分が生じやすく、その地点で湿害によるダイズの生育低下が深刻になる。窪地近くに暗渠が施工されていると周囲の湿害が軽減され、暗渠未施工の圃場と比較してダイズの被覆率が大きく改善する。

  • キーワード : ダイズ、湿害、窪地、暗渠、生育改善
  • 担当 : 東北農業研究センター・緩傾斜畑作研究領域・生産力増強グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

担い手への農地集積が進展する中、生産の効率化に向け、自ら緩傾斜地の小区画水田の畦畔を崩しての合筆(緩傾斜合筆・図1a)に取り組む生産者も見られる。緩傾斜合筆では、省労力で合筆を行うために、均平作業等は行わない場合も多い。そのため、周囲より低い窪地部分が生じやすく、その一帯には水が溜まり、湿害による生育低下がより深刻になる。主要な湿害対策として、暗渠や明渠の施工による水はけの改善(排水対策・図1b)が挙げられる。しかし、これらの排水対策によって、特に窪地部分におけるダイズの初期生育がどの程度改善されるのかは明らかでない。本研究では、労力や暦の存在などの影響を考慮し、生産者が位置を決定して施工した暗渠、ならびに合筆圃場の傾斜方向と平行に施工された明渠を有する岩手県北上地域の生産者圃場を対象に、暗渠・明渠の位置、窪地の地点、播種約1か月後までの生育(被覆率増加量)をドローンセンシングとGISを用いて調査し、窪地および暗渠・明渠の存在がダイズ初期生育の改善におよぼす効果を検証する。

成果の内容・特徴

  • 播種直前に圃場の平均的な高さより低いと計算される地点を窪地とするとき、最大深さが6cmを超えるような窪地がある地点ではダイズの被覆率(植物体が地上を被覆する割合)が低下する傾向にある(図2、丸印)。
  • 播種約2週間後から4週間後までの間の被覆率増加量には、窪地の深さと暗渠からの距離が大きく影響する。特に、窪地の深さが3cm以上の地点においては、ダイズの被覆率低下が大きい。一方で、合筆圃場の傾斜方向に対し平行に施工された明渠が被覆率増加量に与える影響は極めて小さい(図3)。
  • 深さ3cm以上の窪地から10m以内に深さ50cmで暗渠が施工されていると、暗渠未施工の場合と比較して、ダイズの被覆率増加量が大きく改善する。一方で、窪地が2cmよりも浅い地点に暗渠が施工されていても、被覆率増加量の改善は極めて小さい(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 窪地の地点はRTKドローンで撮影した画像から不陸計測を行う方法のほか、トラクターにRTK-GNSS受信機を搭載する高低差センシングによっても調べることができる。この技術と組み合わせることで、本研究の成果は湿害被害が深刻な圃場に排水対策を導入する際に、「窪地の地点を調査し、その近くに暗渠を施工する」という新たな指針を策定するうえで活用できる。なお、作付けを行った後も、大規模な均平作業等を行わない限り、少なくとも3年間は窪地の位置が大きく変化することはないが、それ以降における窪地の位置や大きさの変化については未確認である。
  • 本成果は東北地方に限らず、ダイズ播種作業が広く行われる地域において活用できる。ただし、傾斜のないあるいは極端に緩やかな圃場においては、暗渠近くにおける生育改善の大きさや有無が変化する可能性があることには留意を要する。
  • 合筆圃場の傾斜方向に対し平行に施工された明渠がダイズ生育改善に与える効果は本研究では確認できていない。また、暗渠・明渠が施工されていることによる窪地部分での収量向上についても、本研究の範囲では明確でない。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業実証プロジェクト)
  • 研究期間 : 2022年度
  • 研究担当者 : 近藤琳太郎、田中惣士、藤竿和彦、宮路広武
  • 発表論文等 : Kondo R. et al. (2024) Plant Prod. Sci. 27:283-293