合筆圃場での排水対策によるコムギ生産性改善効果の定量化

要約

合筆を行った圃場内に明渠または暗渠を施工したコムギ生産者圃場を対象とし、収量コンバインの収量データ及びドローンによる生育モニタリング評価を実施することで、コムギ圃場の排水性改善対策に伴う生産性改善効果を定量化して確認できる。

  • キーワード : 生産者圃場、ドローン、収量コンバイン、植生指数、排水性改善
  • 担当 : 東北農業研究センター・農業放射線研究センター・早期営農再開グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

コムギは土壌水分の影響を受けやすく、排水不良に起因する分げつ数の減少、葉の黄化及び葉面積の停滞等による湿害が問題となっている。明渠や暗渠の施工は圃場の排水性を改善させるための基本的な技術であるものの、施工効果を定量的に評価した事例が不足しているため、現地実証試験の実施が必要である。
そこで本研究では、合筆を行った生産者圃場内に明渠または暗渠を施工し、排水性改善区と無施工区とのコムギの生育や収量の比較を通して、コムギ生産性改善効果を定量化する。

成果の内容・特徴

  • 岩手県北上市の緩やかな傾斜面や凹凸が残る合筆圃場(緩傾斜合筆圃場)を対象とする。本圃場は、水田から畑地化して4年を経ており、コムギ品種「ナンブコムギ」が栽培されているが、湿害により収量が著しく低下する状態が続いている。圃場内の高低差等を調査した後で明渠を施工した区2筆(84a、65a)、暗渠を施工した区1筆(92a)、無施工区(対照区)1筆(49a)を対象とする(図1)。収量コンバイン及びドローン(設定高度40m)に搭載したマルチスペクトルカメラによって得られる圃場全面を網羅したデータを用いて、湿害発生から生産性改善に至る過程を定量化できる。
  • 各施工区において1m2×5点を平均化する刈り取り収量と収量コンバインのデータから算出されるコンバイン収量を比較すると両者の傾向はやや異なる傾向にある。刈り取り収量は圃場内の地点によるばらつきが大きいため、圃場全面の収量代表値としてはコンバイン収量を用いるのが妥当であり、本圃場では、明渠区、暗渠区、無施工区の順に収量が多い(表1)。
  • 栽培期間中の2022年10月から2023年6月にかけて、降水量が多い期間が断続的に観測され、圃場全面のマルチスペクトル画像から、茎立期にあたる4月12日には各施工区で湿害と思われる生育の停滞が認められる。これに対し、開花期にあたる5月18日以降は無施工区の生育が最も抑制される一方で、明渠区や暗渠区の生育が改善する傾向にある(図2)。
  • 植物の活性度を表す指標であり、マルチスペクトル画像から赤と近赤外の反射率を抽出して算出される正規化植生指数(Normalized Difference Vegetation Index:NDVI)による比較においても、明渠区、暗渠区、無施工区の順に開花期以降の生育量が大きく、コンバイン収量の大小順位とも一致する(図3)。したがって、明渠・暗渠施工によってコムギ生育は改善し、収量向上に結びつく。

成果の活用面・留意点

  • 本研究の成果は、圃場内に明渠または暗渠を施工する際の参考資料としての活用が期待される。また、マルチスペクトル画像や収量データを経年的に蓄積して解析することで、排水対策の内容を生産者ごとに最適化することができる。
  • 収量コンバインやドローンに搭載するマルチスペクトルカメラを用いて得られたデータを活用することで、各施工区のコムギ生産性の相対的な比較に利用できるが、葉面積指数(Leaf Area Index:LAI)やバイオマス量などの生態学的な情報や土壌水分の計測値に基づいた直接的な解析を併せて行うことで、より具体的な評価が可能になる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(スマート農業実証プロジェクト)
  • 研究期間 : 2022~2023年度
  • 研究担当者 : 山本修平、久保堅司、藤村恵人、田中惣士、冠秀昭、宮路広武
  • 発表論文等 : 山本ら(2025)日作紀、94:148-158