ダイズシストセンチュウレース1抵抗性を持つ東北北部地域向け大豆品種「リョウユウ」

要約

大豆品種「リョウユウ」は、重要病害虫であるダイズシストセンチュウのレース1、3抵抗性を持ち、レース3抵抗性品種に寄生する寄生性の強いセンチュウの発生圃場において、減収等の被害を抑えることが期待される。「リュウホウ」と同等の成熟期で、豆腐や煮豆等の加工に適する。

  • キーワード : 大豆、ダイズシストセンチュウレース1抵抗性、ダイズシストセンチュウレース3抵抗性、ダイズモザイクウイルス抵抗性、ラッカセイわい化ウイルス抵抗性
  • 担当 : 東北農業研究センター・水田輪作研究領域・水田作物品種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

大豆の重要病害虫であるダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines Ichinohe)は、大豆の根に寄生して収量を低下させる。これまで東北地域では、寄生性が最も弱いレース3に分類される個体群が広く発生し、輪作や、レース3抵抗性を持つ「リュウホウ」や「ナンブシロメ」の作付けにより、その被害を抑えてきた。しかし、岩手県等でレース3抵抗性品種に寄生可能な個体群の発生が報告され、輪作が困難な地域において、レース1抵抗性のようなより強い抵抗性を持つ品種が求められている。そこで、ダイズシストセンチュウレース1、3抵抗性に加えウイルス病抵抗性を備え、豆腐等への加工に適する大豆品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「リョウユウ」は東北北部地域の主力品種である「おおすず」を種子親、ダイズシストセンチュウレース1、3、ダイズモザイクウイルスA、A2、B、C、D系統およびラッカセイわい化ウイルスに対する抵抗性を有する「刈交1908F1」を花粉親として交配および1回の戻し交配を行うことで育成された品種である。
  • 育成地(秋田県大仙市)における試験では、成熟期は「リュウホウ」と比較して水田転換畑標準播で2日遅く、普通畑晩播で3日早い。茎の長さは水田転換畑標準播で「リュウホウ」と同等であり、普通畑晩播で6cm短い(表1、図1)。子実重は「リュウホウ」より水田転換畑標準播で6%、普通畑晩播で4%少ない(表1)。百粒重は「リュウホウ」と同等であり(表1)、種子の地色は"黄白"、子葉およびへその色は"黄"、粒形は"球"である(図1)。
  • 裂莢性は"易"であり、ダイズシストセンチュウレース1、3に"抵抗性"、ダイズモザイクウイルスA、A2、B、C、D系統およびラッカセイわい化ウイルスに"抵抗性"である(表1)。立枯性病害に対する抵抗性は「おおすず」と同じ"やや弱"である(表1)。
  • 成熟期や奨励品種決定調査等の試作試験の成績から、栽培適地は東北北部地域である。岩手県のダイズシストセンチュウ発生現地圃場における栽培試験では、「リョウユウ」のシスト寄生指数はレース3抵抗性を持つ「ナンブシロメ」より有意に低く(表2)、寄生を抑制しており、子実重は2年平均で「ナンブシロメ」より90%多い(表2)。
  • 粗タンパク質含有率は「リュウホウ」と同じ"やや低"に分類される(表1)。実需者による加工適性試験の結果から、豆腐、煮豆、納豆および味噌(赤色系)の加工に適している(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 大豆生産者、大豆加工事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 主に東北北部地域において、「リュウホウ」や「ナンブシロメ」等のダイズシストセンチュウレース3抵抗性品種にセンチュウ被害が発生している地域。2024年に岩手県で奨励品種に採用され、県内全域のダイズシストセンチュウ発生圃場において、2028年に285haの普及を見込む。
  • その他 : ダイズシストセンチュウの防除には、まず、輪作の実施を検討する。抵抗性品種を繰り返し栽培することで抵抗性が打破される危険性があるため、短期輪作も避けることが望ましい。また、立枯性病害に対して"やや弱"であるため、被害履歴のある圃場での作付けを避ける。裂莢性が"易"であるため、成熟後は収穫適期に到達後、速やかに刈取りを行う。

具体的データ

表1 育成地における試験成績,図1 「リョウユウ」の草本と子実の外観(2021年、育成地水田転換畑産),表2 ダイズシストセンチュウ発生現地圃場(岩手県軽米町)における栽培試験成績

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(委託プロジェクト研究:DNAマーカーによる効率的な新品種育成システムの開発)、農林水産省(新農業展開ゲノムプロジェクト:ゲノム研究成果を活用した大豆等イネ科以外の新品種開発)、農林水産省(気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクト:気候変動に適応した大豆品種・系統の開発)
  • 研究期間 : 2001~2021年度
  • 研究担当者 : 菊池彰夫、島村聡、菱沼亜衣、笹谷絵梨、南條洋平、佐山貴司、平田香里、松本直、加藤信、河野雄飛、湯本節三、高田吉丈、境哲文、島田信二、佐々木貴法(岩手県農研セ)
  • 発表論文等 :
    • 菊池ら「リョウユウ」品種登録第31573号(2026年3月2日)
    • 笹谷ら(2026)農研機構研究報告、24:61-81