要約
秋田県大仙市の事例では、稲わら堆肥を長期間にわたり施用している長期連用水田輪作圃場において、稲わら堆肥の施用は無施用と比較して、可給態窒素量とイネの収量を有意に向上させる一方、ダイズでは収量に影響しない。
- キーワード : ダイズ、イネ、可給態窒素量、稲わら堆肥、水田輪作、長期連用
- 担当 : 東北農業研究センター・水田輪作研究領域・水田輪作グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
ダイズは窒素吸収量の約半分が土壌由来とされ、ダイズ栽培の頻度が高まると地力(=可給態窒素量)が減耗する。地力維持のために堆肥の施用は推奨されており、国内では堆肥施用による可給態窒素量の向上がダイズ収量の向上に寄与すると信じられている。しかし、水田転換畑における堆肥の施用でダイズ収量が向上したことを示す先行研究は乏しく、また長期間にわたる水田輪作体系で堆肥施用の効果を検証している報告はほとんどない。東北研大仙拠点では1982年から稲わら堆肥を施用している圃場があり、2005年以降イネとダイズで輪作を行っている。そこで、2005~2020年の16年間にわたる長期連用試験の結果をもとに、イネ、ダイズ収量および可給態窒素量に堆肥施用が及ぼす影響を検証する。
成果の内容・特徴
- 30°C、4週間の湛水培養で測定した可給態窒素量は、窒素施肥の有無に関わらず稲わら堆肥の施用で60%以上向上する(図1)。図1のエラーバーから、堆肥施用に伴う可給態窒素量は対象とした解析期間中において安定している。
- 可給態窒素量以外の土壌化学性も、稲わら堆肥の施用で有意に向上する(表1)。
- 稲わら堆肥の施用はイネの収量を16~71%有意に向上させる一方、ダイズでは有意な差が認められない(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本研究はダイズ作における施肥設計を行う際の基礎的知見として活用できる。特に、水田転換畑における堆肥施用による地力維持・向上とダイズの生産性は分けて考える必要がある。今後、家畜ふん堆肥などでも適切な解析に基づいた長期的検証が今後求められる。
- 本研究の基礎データは、東北研大仙研究拠点で管理している水田輪作圃場(細粒灰色低地土、10a)の栽培試験結果である。圃場は分割法で試験設計されており、1次因子が稲わら堆肥の有無の2条件、2次因子が無窒素、慣行施肥、および可変施肥の3条件である。本研究では可変施肥区を除いており、データを取得した圃場の施肥条件は、稲わら堆肥の有無の2条件と窒素施肥の有無の2条件を組み合わせた計4条件である(表2)。データの取得期間は2005年から2020年で、イネは「あきたこまち」、ダイズは「リュウホウ」の栽培試験結果がそれぞれ8作分ずつ、作付後の作土の土壌分析値は16作分取得している。各施肥条件は試験区としての反復がないため、本研究では年次を反復として解析している。
- 2019年に散布した稲わら堆肥の水分含有率は75.1%、全炭素濃度は8.6%、全窒素濃度は0.5%、全リン濃度は0.15%、全カリウム濃度は0.84%である。稲わら堆肥は、大仙研究拠点で栽培した「あきたこまち」および「べこあおば」の稲わらを原料に作製している。作製時には石灰窒素を入れている。稲わら堆肥の散布時期は、水稲作では4月上旬、ダイズ作では播種1週間前に施用している。基肥は全層施肥しており、水稲作では代かき(移植1週間前)時、ダイズ作では耕起(播種1日前)時に行っている。
- イネは80株/坪で5月中旬に移植を行い、9月中旬に収穫している。ダイズは7.4株/m2、一株あたり2本立てで6月上旬に播種し、10月上旬に収穫している。イネおよびダイズともに、地上部と収穫物はすべて持ち出している。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2024年度
- 研究担当者 : 髙本慧、髙橋智紀、戸上和樹、浪川茉莉、西田瑞彦(東北大)
- 発表論文等 : Takamoto A. et al. (2025) Soil Sci. Plant Nutr. 71:61-67